校長ブログ

共通テストのサンプル問題ー歴史総合、地理総合、公共

2021.04.30 教科研究
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 2025年に実施される大学入学共通テストにおける新科目のサンプル問題が公表されました。学習指導要領の改定を踏まえ、高校の社会においては、教科書の知識を覚えるだけでなく、具体的なテーマについて複数の資料を読み解き、思考力や探究力を重視するという方針が設問に反映されています。

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 日本と世界の近現代史を学習する「歴史総合」では、「自由」に関する四つの演説や文章から地域や時期によって自由の概念が異なることを読み取る問題やオスマン帝国憲法と大日本帝国憲法、清でつくられた憲法原案の共通点や違いを比較してアジア諸国が立憲制をどう取り入れたかを読み解く問題が出題。歴史上の流れだけでなく、地域や国を超えて時代を考察する教科横断的な点が浮き彫りにされているのが特徴です。問6では問1〜5において示された資料から主題を類推させ、「さらに追求するための資料」を考えさせるなど、センター試験や共通テストで見られなかった設問となっています。  

「歴史総合」と同様、必修科目になる「地理総合」では、世界地図やグラフなどを示し、地球的な課題について多面的に考える力が求められています。第1問は世界の人口に関する問題、第2問は自然災害に対する備えと復興のあり方について。津波対策として集落を高台に移転させることについて考えさせています。第3問は「地理探究」への接続を意識し、市町村合併が行われた新潟県上越市を題材に、都市の空洞化問題、合併による過疎化によって起こる問題などを考察、持続可能な日本の国土のあり方を探究する力の測定に結びつけています。獲りたい生徒像がメッセージとして伝わってきます。地理情報システム(GIS)等を活用した「バーチャルフィールドワーク」といったICTによる授業例や他教科との連携を通して背景知識を強化していく必要があります。これまで地理は、様々な資料から読み解く問題が多かったものの、サンプル問題はその傾向がより強まっています。「地理B」同様、9択の選択問題や3つの組み合わせを全て理解している必要がある問題など、本質的な理解が問われる問題が散見されました。

 法や政治などの幅広いテーマを扱う「公共」では、合意形成のあり方について問う設問があり、結論が一つでなく、正答が3パターンあるものがありました。第1問は食品ロスという問題に対する探究学習、第2問は高校生の模擬国会の開催活動をテーマに財務相の立場などから考えさせる問題。第3問はSDGから課題を選び、グループで探究学習するというシチュエーションでしたが、どれも「主体的・対話的で深い学び」を意識したものになっています。

 3教科の底流にあるのは「考える力」に他なりません。本校でもすべての教科において、思考力・判断力・表現力の育成に向けた取り組みを加速させていきたいと思います。