校長ブログ

授業力

2021.07.01 カリキュラム・マネジメント
7月1日

 いわゆる難関と言われる大学進学を希望するクラスを担当することになったという3年目の英語教員からの「大学受験対策指導をする際のポイントを教えてください。一度、授業を見ていただき、授業力を上げるための助言をいただけませんでしょうか?」という依頼にお答えします。

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 授業を直接見ていないので、ここでは初期段階のコメントにとどめたいと思います。まずは、日頃から過去問はなるべく多く読み解き、項目別にデータベース化し、傾向を分析しておくことです。(サンプルは少ないものの、特に「大学入学共通テスト」に代表される新傾向問題は入念に!)入試問題は、どのような生徒を取りたいかという大学のメッセージとも言えます。その意味で、過去問研究は、教科指導だけでなく、進路指導にも役立ちます。英語の読解問題で言えば、論説文、物語、エッセイに分類し、頻度が高く、テーマがホットな素材をまとめておく。文法・語法・英作文で言えば、ケアレスミスの出やすいジャンルの設問を集めておく。リスニング問題であれば生徒が毎日、確実に聞く練習をする環境を作るといった作業は必須です。(市販の問題集はそのように作られているのですが、ご自身でその努力をすることが本物の授業力をつけるのです)

 "授業の仕込み"となる予習が授業のすべてを決めると言っても過言ではありません。予習では、授業のストーリーを組み立て、何を教えるかポイントを絞った上で徹底的にプレゼンテーションすべきです。それが"わかりやすい"、"メリハリがある"ということにつながっていくのです。すべて教え込むのではなく、過去問データから何を切り捨てるのかという"視点"を養っておかなければなりません。

 生徒に1日の学習内容を尋ねて「英語です」というような答が返ってきたら失敗です。重要なことは、その日のテーマをわかりやすく伝えることで"わかる喜び"を体感させ、学んだことが多くの教科とつながりがあり、もっと勉強したいと思わせることです。テキストには、その日の授業のシナリオをメモしておき、単調な答え合わせに終わらないよう配慮すると同時に、なぜその解答になるか図示する、文構造やcontextを論理的に説明するといったテクニックも駆使しましょう。最近では、予備校等が授業力アップのための講座を設けていますので、それらを活用するのもよいと思います。(参考にするだけです)

 出題者の意図を研究、授業で詳しく説明することによって、その問題の背景にまで踏み込めれば、生徒の目は輝きます。授業の合間には、教材にそったエピソードを盛り込み、今、学んでいることが次の授業につながり、達成感が得られるようなクロージングにもっていきましょう。

 生徒にとって授業は楽しく、わかるものであり、"伸びの実感"に連動するものでなければなりません。教師は1年間、同じ生徒を指導するのですから、"教師が変わらなければ生徒は変わらない"ということを肝に銘じておいてください。アプローチに成功し、理解度が深まった直後、関連する内容について笑いを誘うようなパフォーマンスを組み込むと効果倍増です。

 付け加えると、経験談やトレンド情報などを織り交ぜながらいかに授業を楽しむかという"気持ちの余裕"が長続きの秘訣であり、授業力につながっていくのです。引いては、それがアダプティブ・ラーニングに連動し、学力向上に寄与すると言えるのです。