校長ブログ

コミュニケーションのための英文法

2021.07.09 教科研究
7月9日

 英語がEFLEnglish as a foreign language:外国語としての英語)である日本人にとって、ネイティブと同じように英語を使いこなすことはなかなか難しいことです。しかし、円滑な情報交換に向けて、言語の使用場面を意識した発信努力を心がけたいものです。そのためには、コミュニケーションのための英文法が必要です。

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 例えば、「昨日、大阪で何回か地震があった」という場合、第3者が大阪での地震を客観的に伝えるなら Several quakes occurred in Osaka yesterday. もしくは There were several quakes in Osaka yesterday. が考えられます。大阪在住の人が直接、体験した地震のことを伝えるなら We had several quakes in Osaka yesterday. ニュースや新聞等で地震のことを知り、伝えるなら Several quakes are reported to have occurred in Osaka yesterday. あるいは、Several quakes reportedly occurred in Osaka yesterday. 文語的にするなら It is reported that several quakes occurred in Osaka yesterday. あたり。他人から聞いた大阪の地震という話題をまた別の人に伝えるなら Several quakes are said to have occurred in Osaka yesterday. 等々といったところが高校で習う英文法を活用した表現です。

 コミュニケーションのための英文法といってもこれまでの学校英文法を否定するものではなく、基礎をしっかり学ぶという点は変わりありません。しかし、教える側としては、文法用語を使いすぎて文法のための文法に陥らないように配慮しなければなりません。

 まず、日本語と英語が異なる言語であることを浮き彫りにすることが大切です。「彼女は母親に似ていると思いますか」を Do you think she is resembling her mother?(resemble は「状態」動詞なので進行形は不可)、「多くの野生動物がその森に生息していた」を Many wild animals inhabited in the woods.inhabit は他動詞なのでinは不要)といった誤訳例を示して、辞書で正しい使い方を学ぶことは基本中の基本です。

 実際のコミュニケーションでは、年齢差や立場によって、表現方法が異なります。例えば、「確信度」を表す助動詞なら絶対的なものではないにしても couldmightmaycanshouldought towouldwillmust というモダリティ( Modality :話し手の心的態度)に留意したいもの。仮定法で推量を表す「ひょっとしたら〜かもしれません」の couldmight から「〜にちがいありません」の must まで、状況をつかんだ運用が大切です。一般の参考書とは書き方が違うため、最初は戸惑うかもしれませんが、高学年になれば、英作文で役立ちます。

 例文にも工夫が要ります。メディア英語を活用することも一法です。 Hayato Sakamoto smashed two homers to power the Giants to a 9-1 win over the Tigers. (巨人の坂本勇人選手は本塁打を2本放ち、巨人が阪神に9対1で圧勝)の結果の不定詞、Two cars crashed on Meishin Expressway, killing 4 persons instantly.(2台の車が、名神高速道路で衝突、4名即死)の分詞構文は、スポーツ記事、あるいは事件の顛末を描写するのによく用いられます。文を簡略化し、引き締める効果がある等の解説は、生徒にとってかなり刺激的なようです。

 ひたすら例文を暗記するやり方では本物の実力はつきません。例えば、比較級には、昔から"クジラの構文"( A whale is no more a fish than a horse is.)と呼ばれるものがあります。これを A is no more B than C とすれば、「 A C と比べて決してBというわけではない」が元の意味。常識ではあり得ないことを C (is B)で例えにして、それと比べても A is B である可能性がない。そこから「 C B であるはずがなく、それ以上に A B であるはずもない A C 同様、B でない」と説明すれば本質的理解につながります。つまり、「馬が魚であるはずでなく、それ以上にクジラが魚であるはずもないクジラは馬同様、魚でない」。応用すると I can no more swim than a stone can. を「私は泳ぎがまったくダメだ」と意訳する理由がわかるはずです。

 その他、"たすきがけ"による受動態への機械的な書き換え等は避けたいものです。「旧」から「新」への情報の流れをおさえ、文のつながりの中で受動態を用いるのが自然というようなアプローチをすると作文力は向上します。