校長ブログ

英語4技能のバランス

2021.07.24 教科研究
7月24

 4技能のバランスよい英語教育について、"中だるみ"になりがちな中2と高2を対象とした指導法をご教示願いたいというご要望がありましたのでサンプルを例示します。

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 「英語の授業は英語が基本」という文言は聞き慣れているでしょうが、大切なことは、生徒が英語を話せる環境づくり。世界の英語学習者が人口の約1/3にあたる約20億、non-nativeが約7割と言われる現状からみて、World Englishesも視野に入れたコミュニケーション・ツールとしての教育を展開することが大前提です。

 "英作文は英借文" をキーワードに、音読を習慣化したいものです。最初に、中2の指導事例を示します。

 第1段階:教科書のOne lessonの内容と新出文法を把握してから、到達度に応じたクローズ型確認テスト。音読は、授業中、本文をセンス・グループ(意味のかたまり)にして生徒が教師の後からリピートするlisten and repeat、モデルリーディングに合わせて音読するパラレルリーディング等を多用し、マンネリ化を防止します。

 宿題は到達度に合わせて音読と筆写を中心とし、テスト範囲は徐々に英文を追加していくという形式が一般的。授業では小テストを実施、となりの生徒と答案を交換、ミススペリングをチェック。(満点者は評価に加味)その際、リラックスした雰囲気で学習できるよう配慮します。中学生は何でも吸収できる時期ですから興味を持って取り組んでくれるはずです。

 第2段階:ペアワークによるシャドーイング。全員が起立し、同時に読み始め、読み終わった段階で着席するバズリーディングを組み込み、顔を上げてフレーズを音読するread and look upへ移行。苦手意識をもつ生徒には適宜、助言を与え、満点の生徒にはジェスチャーつきでモデル・リーディング。他の生徒は本文を見ずにリテンションした後、ペアワークでシャドーイングさせるといった流れも創り出したいものです。

 効果として、正確な発音に加えて読み方が速くなること、TTの授業での集中度が高まり、口をついて出てこなかった英語がたどたどしくはあってもなめらかになってくること、暗唱した英文の中の単語を入れ替えて"英借文"できるようになるなどの進歩が見られます。

 次は高2。英語コミュニケーション能力の養成に不可欠な input intake output を充実させるために音読指導は必須。音読と電子辞書を活用した指導事例を紹介します。

 予習段階で、授業で扱った読解素材からキーワードと思われる英単語3つとその説明文を電子辞書に内蔵された英英辞典で調べてノートに筆写してくるよう指示。キーワードとなる語は名詞が中心ですが、自分が重要だと思った語を自由に選択。高学年になるほど大学入試の過去問や単語テスト用の単語帳、英字新聞を活用するケースが増えますが、授業内で文脈の背景知識を付与したものならなんでも可とします。授業は以下の通り。

ペアワークで一人の生徒が調べてきた英単語1つの説明文を英語で2回音読します。未習の単語が含まれることもあるため、chunking(意味のかたまりにすること)してゆっくり読みます。

相手が音読する英文を shadowing(音声を聞いた後、即座に復唱)し、日本語に要約して応答、該当する単語を発音してノートに筆写します。(dictation[書き取り]してから該当する単語をノートに書かせることもあります。

答え合わせした後、順番を入れ換え、5分程度、繰り返しますが、間違えた単語はノートに書き取っておき、学校にいる間に自分の電子辞書でその単語と説明文のスペリングを確認します。

家に帰ってから間違えた単語と説明文の音読を繰り返します。「紙」の辞書を引き直し、その単語に付箋をつけ、1週間後、もしくは考査前に見直すという作業を習慣化します。

 教師はロール・モデル(role model)であり、机間巡視等を通じてsupporter に徹し、生徒の到達度には常に目を配り、時に励ましの言葉をかけ、やる気をそがないようにする配慮が必要です。慣れてくると、休み時間や昼休みなどに取り組む生徒も出てきます。朝のSHLHを活用することもあります。

 電子辞書が主流を占める今、紙辞書は自宅で"じっくり"読み、授業中は電子辞書という生徒がいます。"じっくり"の意図するところを聞くと、未知の動詞があればまずは文型を考え、例文を参照しながら文脈から意味を確定するとのこと。語学をマスターする上で好ましい取り組みと言えます。