校長ブログ

段取り

2021.09.17 カリキュラム・マネジメント
9月17

 私学は、何世代にもわたって引き継がれていく建学の精神を基盤としつつ、時代が求める教育を展開していかなければなりません。新しいことへのチャレンジには勇気がいりますが、変えてはいけないものと変えるべきものをしっかり見極め、教育実践していきたいものです。今回は、ある先生と「段取り」することについての一コマです。

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K先生:教師生活も3年目を迎え、今年から文化祭のまとめ役をすることになりました。そこで昨年のプログラムを参考にして、原案を作成して会議で提案したところ、他の先生方から「前年度と比べて、どこに変化があるの?」「テーマの具体化について先生はどうお考えですか?」といった質問が相次ぎ、再検討することになりました。自分としては、何か新しいことを考えたのですが、よいアイデアが浮かばず、悩んでいます。お知恵をお貸しください。

校長:お疲れ様。頑張っているんだね。質問された先生方は失敗を恐れず、自分らしさを発揮して取り組んでほしいと思って発言されているように感じるね。「昨年のプログラムを参考にして」ということだけど、前回、取り組んでよかった点とうまくいかなかった点、つまり、メリットとデメリットは把握しているのかな?

K先生:はい。一応。去年、担当された先生から課題等の引継ぎは受けました。

校長:では、それを参考にどのようなテーマで組み立てようと思っているの?

K先生:テーマはここ数年同じなので変更は加えず、よかった点は引き続き、課題となったところを修正したものでいこうと思っています。

校長:テーマが数年、変わらないというのは何か理由があるのかな?その点も議論しておいた方がいいね。いずれにせよ、よいところは引き継ぎ、課題は修正ということだけどそれだけで十分だと思う?発展は望めるのかな?

K先生: ...厳しいと思います。よいところを受け継ぎ、前年度の課題を必要最小限だけ修正しただけのところに甘さがあったと思います。慎重になりすぎました。校長先生がよくおっしゃる見通しなき前年踏襲でした。でもなかなかよいテーマや企画案が浮かばなくて...

校長:ご苦労様。ところで文化祭の"主役"は誰かな?

K先生:もちろん、生徒です。

校長:そうだね。我々教師も生徒が創る文化祭を支えて、成功を分かちあいたいよね。

K先生:はい。

校長:新しいテーマや企画案ということだけど、何も先生一人で考える必要はなく、コアとなる生徒たちや保護者会、地域の人たちの意見に耳を傾けること、つまり衆知を集めることが先じゃないかな?

K先生:そうしたのですが、よいアイデアが出てこなかったのでつい...

校長:生徒たちにはアイデアを出せるヒントを何か示したの?

K先生:...行き当たりばったりでした。

校長:他校の取り組みを調べるとか、大学の文化祭を検索してみるとか、いろいろ方法があると思うけど...また、生徒から「最適解」が引き出せない場合も想定して、企画案の選択肢を準備しておくことが必要かもね。これは探究学習にもつながるよ。

K先生:その通りだと思います。段取りですね。

校長:生徒の立場になれば、小さな成功体験の積み重ねと褒め言葉が自信になり、成長につながるんだ。その意味で、生徒が創り、教師や保護者、地域が支える文化祭が基本線だね。

K先生:生徒やその周辺の人たちの意見を聞くのに加えて、生徒が「納得解」を出しやすくなるようしっかり段取りしてから再度、提案文書を作成したいと思います。

校長:生徒には無限の可能性があるのだから、もっていきようによってはドラマが生まれるかもしれないよ。文化祭は在るものではなく、創るものだという発想で、根気強く指導して、記憶に残るものに仕上げてください。