校長ブログ

教育改革も秒進分歩

2021.10.13 カリキュラム・マネジメント
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 今回は、長年、公立高校を定年退職され、現在は私立高校に勤めるT校長との対話からです。

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T氏:はじめまして。私は公立高校の校長を定年退職し、今年から私立高校の校長を仰せつかりました。今、自校全体の担任力を上げるべく、担任への指導に注力しています。平井校長は、私学教育に長く関わってこられ、担任教師を育成する上でどのような点に留意されていますか?

校長:生徒は実によく教員を観ています。「担任教師は生徒を知るのに1年かかり、生徒は1日で教師を見抜く」のではないでしょうか?どんな学校であっても生徒は教師の言動に対して敏感です。故に、教師は常に自分を律し、「言動一致」を実践しなければなりません。生徒との間に信頼関係がなくては、どんなに素晴らしい指導を展開しても生徒の心を動かすことはできないからです。そのあたりに焦点を絞った指導・助言を心がけています。

T氏:なるほど。教員の自己研修、自己啓発についてどのようにお考えですか?

校長:公私問わず、現場の教師はタイト・スケジュールです。ましてや担任をもつと、日々、クラスの生徒と対峙し、その成長に立ち会えるという喜びを得られる一方、様々な課題に直面するのがふつうです。教員の成長について、私は担任や教科指導、分掌といった日頃の校務を通じたOJTOn the Job Training)がすべてだと思っています。最高のアドバイザーは、管理職だけでなく、否、それ以上に職場の先輩、後輩といった同僚にあるような気がします。そして、その成長を支えるのが教員個々のメタ認知(自分自身を客観的に認知する能力)と自助努力に他なりません。さらに、これを補完するのものが、職場から離れたところで行うOff-JT(Off the Job training)ではないでしょうか?

T氏:よくわかります。これはどこも同じですね。御校では、教員個々のメタ認知を高めるためにどのような点に留意されていますか?

校長:学校における教員の育成は、企業とは同じではありませんが、共通しているのは、「組織は人なり、教育は人なり」ということです。その意味で、全教職員には、若手教師の育成に対し、「自分を超える教師づくり」をミッションの一つにしてほしいとお願いしています。メタ認知をメタ認知として意識するのではなく、同僚との対話の中から各々が自然と成長の糸口を見つけてくれることを期待しています。そして、その基盤になるのが「報告-連絡-相談」です。

T氏:学習指導要領の改訂、大学入試改革など、時代の流れはとても速く、少子化で経営も考えなければならない役柄上、どうしても改革しなければならないような局面に立たされるのですが、なかなか意思決定には至らず、歯がゆい思いをすることが頻繁にあります。御校の意思決定はどのようなプロセスで行われるのですか?

校長:世の中の変化スピードは驚くほど速く、今や「秒進分歩」と言われる時代です。これまでならある一定の時間をかけて成長してきたものが、数年、場合によっては数日で可能になるということも当たり前の光景になりました。山積する課題解決に向けて、検討ばかりに時間をかけていると、「たたき台」ができた時にはすでに陳腐化しているという皮肉な現象が起きてしまいます。時代の変容とともに要求されるのが、即断即決、つまり、スピード。そこで大切なのは、適切な目線での現状把握と情報、改善・成長に向けてのPDCAサイクル、さらにはビジョンとマネジメント、そしてガバナンスです。ビジョンにエビデンスを与えるために、客観的データを提示、成功体験をイメージさせつつ、なるべく短時間で意思決定にもっていきます。

T氏:ビジョンを形にしていくのが一番難しいと思うのですが、どのように対応をされているのですか?

校長:ビジョンを具現化していくために最も重要なのが合意形成、つまり、スタッフのベクトルを同じ方向に向けること。そのためには、関係者からヒアリングを行い、問題点を抽出、客観的データに基づく分析としっかりした理論を土台にした模範解答を前もって用意、状況に応じて修正・補足を加えながら形にしていきます。学校では多数決の傾向が無きにしもあらずですが、私自身が心がけているのが、環境が変化して、新たなことにチャレンジするにあたって、「丸投げ」するのでなく、その目的と方向性を十分に説明し、担当者との「合意形成」を徹底、双方向のざっくばらんなやりとりを可能にした上で、実行に移すという段取りをとっています。

T氏:先生のカリキュラム・マネジメントは注目しています。また、ご教示ください。

校長:こちらこそ、よろしくお願いします。