校長ブログ

これからの学校組織

2021.10.29 カリキュラム・マネジメント
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 学習指導要領の改訂や大学入試改革によって、教育界も大きく変わりつつあります。しかし、時代は変われど「人」がその中心にいることは間違いありません。今回は、私が大学で担当する「学校経営論」の延長線上で、教育コンサルタントのF氏と学校組織論について懇談しましたのでその一コマをご紹介します。

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F氏:これまでの先生の豊富なご経験から、現在の学校組織の課題とその対策は?と聞かれたらどのようにお答えになるのでしょうか?

校長:自分が経験した範囲でしか言えませんが、学校の規模が大きくなればなるほど、仕事内容が細分化され、校務間の壁が出来上がる傾向にあるということです。どのような学校でも独自の歴史と伝統があり、暗黙の校務分担が形成されるものです。つまり、セクショナリズム。故に、学校を取り巻く環境がこれほど劇的に変化し、新たな課題が発生しても、前年踏襲、相互不干渉、先送り体質から抜け切れず、発展的解消が見込めないケースが少なくありません。勿論、生徒募集にも影響しますから私学であれば経営基盤を揺るがすことになりかねません。学校には今や個人の力では解決できないほどの多くの課題が山積しています。その意味で、学校文化のひとつとも揶揄される「一国一城の主」から「チーム学校」へのマインド・シフト、つまり、校務の有機的結合による組織的・機能的運営への変容が不可欠なのです。

F氏:働き方改革ですね。

校長:教師は皆、誠実ですから生徒のために日々、頑張っています。それがこれまでの教育を支えてきたことは言うまでもありません。そのような中、教員からは「忙しい、時間がない」という言葉をよく耳にしますが、年間スパンで見ると、確かにある一定期間はタイト・スケジュールであるものの、人によっては大きな差があることもまた事実。実際、授業をはじめとする教育活動や保護者対応など、どれくらい時間をかけて対応し、生徒への成長につなげたかを分析すると、明らかな温度差が見えてきます。それらを切り口にどうすれば校務を平準化してカリキュラム・マネジメントできるか検討するようにしています。キーワードは、全体最適による協働的職場風土の醸成ですね。

F氏:カリキュラム・マネジメントを推進される上で大切にされている点を教えていただけますか?

校長:カリキュラム・マネジメントの根底にあるのは生徒を育てるためのガバナンス機能、この一点につきます。ポイントは、教員が生徒と接する質と量を高めることにプライオリティを置き、教員が教員としての仕事に集中できる体制をつくること。そのためには、単年度積み上げの運営スパン、事後対応型の危機管理体制からの脱却を図り、ビジョンに基づく組織的PDCAサイクル、コンプライアンス重視の事前管理体制を構築することが先決です。

F氏:いわゆるスクラップ&ビルドですね?

校長:これほど変化の激しい時代には、ニーズに対応する新規計画を立案・実行しなければ生徒は集まりません。しかし、課題を整理し、適切なスクラップ&ビルドができなければ、教員の負担ばかりが増えてしまいます。そこで、定期的に現行の校務の枠組みを見直すことによって、教員のやるべき仕事の再配分を精査することにしています。そのためには、個別能力への依存や第三者からの指摘がない自己研修レベルから学校評価、授業満足度に基づくOJTOff-JTのバランスよい組み合わせが急務と考えています。

F氏:校務の再配分、具体的にはどのようにされているのですか?

校長:適材適所を基本としながら、引き継ぎが容易にできるようなデータ集積と課題抽出によって校務の平準化を進め、再配分につなげています。また、学校というところは、大量の情報に溢れているものの、整理・活用が不十分であり、さらに、教員が個々の頭の中で仕事が進めるという傾向が見受けられますから学校全体への浸透という点では課題が残ります。職員室の実態を見る限り、そういった足元からのスモールステップによる改善が必要だと思います。

F氏:コスト削減についてはどうお考えですか?

校長:経営資源には限りがありますから、付加価値を生み出さない部門は徹底してスリム化、重要度の高い校務については現有資源を集中していくという考え方です。その際、留意しているのは、簡素化、平準化、スケジュール化、システム化、教職員個々のポテンシャルの尊重です。

F氏:勉強になります。話はつきませんが、引き続き、よろしくお願いします。