校長ブログ

AIを考える

2021.11.13 トレンド情報
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 AIという語が世に出たのは1956年、当時の元号は昭和、国内では二度のブームが起こりましたが、時流に乗り遅れたのは過去の話。平成に入ってからディープ・ラーニング(深層学習:人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習)が進展、人口減に直面する日本がAI分野のテクノロジーを物流や製造業、小売業、介護等の現場に積極投入することによって、経済成長を生み出す可能性が模索しました。

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 現在、産学協同によって、エネルギー消費が少なく、柔軟な思考ができる対話型ロボットの開発など、予測困難な時代の課題解決に向けて、AIを脳に近づける研究が進められています。脳は1つであらゆることに対応しますが、AI1つの役割に特化しているケースが多く、用途に応じて使い分けしなければなりません。その中核になっている深層学習は、脳のようなニューラルネットにビッグデータを学ばせているものの、データが少ないとAIは使えず、これが日常生活に対応しにくい要因となっています。その意味で、複数の仕事を同時に担える脳に近いAIが開発されることが期待されています。

 イギリスのディープマインド社は、2018年、人の脳の機能を模したAIで、道路の最適ルート検索技術を開発、IBM100万個の神経細胞を模した半導体回路を開発しました。パソコンのようにメモリーから取り出した情報をCPU(中央演算処理装置)で処理するのではなく、脳のように回路同士で電気信号をやり取りし、情報処理して消費電力を抑えられるそうです。

 情報通信研究機構は、データから学ぶ部分とデータがなくても自発的に判断できる部分を組み合わせたニューラルネット、つまり、人間の脳のように学習するAIを開発し、病気の診断や自動運転でも対向車や歩行者の想定外の動きを把握できるようになる可能性を示唆しました。

 AIを使って脳の神経回路そのものを再現する研究も進んでいます。AIは通常、数字の0と1を使ったデジタル処理で機械的な計算をしています。これに対し、脳内の神経細胞は電気的状態に応じて起こる電気信号で情報をやり取りするアナログ処理で動いているため、仕組みが異なります。さらなる進展が期待されます。

 一方、AIにはハッキングやサイバーテロといった問題があります。左右どちらかにハンドルを切らなければならない局面で、右側に赤ん坊、左側に老人がいたらどう対処するかといった倫理上の問題もあります。また、技術革新が現代生活を豊かにしてくれる反面、安心・安全に照らしたモラルをいかに確立するかも問われています。近年は専門家の知識が細分化され、多様な事象を統合的に捉え、いかにマイナス面を取り除く大局的シナリオが描けるかが喫緊の課題となっています。