校長ブログ

持続可能な社会づくり

2021.12.23 トレンド情報
1223日

 「関西から創る未来社会〜SDGsを育む」をテーマに、「関西経済人・エコノミスト会議」(2021.10.13)が開催され、SDGsの達成に向けて、産学が果たす役割などが議論されました。有識者の見解から新しい時代の学校づくりのキーワードを考えてみたいと思います。

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 湊長博氏(京都大学総長)は、柔軟にテーマや開発方法の議論ができる産学連携が望ましいとし、共同研究を通して、フレキシブルな対応が必要と述べられています。西尾章治郎氏(大阪大学総長)は、SDGsのような課題を解決するには、大学と複数の企業が連携するプラットフォームが不可欠とし、NDA(秘密保持契約)を結んだ上でオープンに話し合うことが必要だと述べられています。藤澤正人氏(神戸大学学長)はSDGsのテーマを産官学連携のビッグチャンスとし、複数の大学と企業が参加するといったプラットフォームが必要と言及されています。

 企業の立場から上田輝久氏(島津製作所社長)は、京都大学との産学連携を通じて、レントゲン博士がX線を発見してから11カ月後には国内でも撮影に成功、2017年には乳がん早期発見のための断層撮影装置(PET)の開発成功などの例を挙げています。現在、4事業がSDGsの目標達成の視点で様々なビジネスを手掛けているとのこと。大阪大学との共同研究では、代謝物を網羅的に分析する「メタボロミクス」をコア技術として医学、食品などの研究を進める協働研究所を学内に設け、社員を博士課程に派遣するリカレント教育を進めています。神戸大学との連携では、地球環境を守るために、バイオ技術を使った化学製品の生産について分析技術で貢献しています。

 SDGsに取り組む姿勢として、湊氏は2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)を視野に入れ、世界のニーズと基礎研究のマッチの重要性を強調、フレキシブルにテーマを設定して、つくり上げていくことが必要とされています。そして、気候変動や感染症、高齢化といったグローバルな緊急課題の解決には「安全」「健康」「環境」「倫理」の科学が求められるとし、先端的な研究・開発に取り組まれています。大阪大学は、新型コロナウイルス禍を受けて新興感染症の流行に備え、自然科学だけでなく人文科学や社会科学を含む全学体制で研究や教育を進める「感染症総合教育研究拠点」を設置。神戸大学は、SDGs企業や地元自治体との連携に重点を置き、その仲介役として「SDGs推進室を立ち上げています。4月には学生環境会議を立ち上げ、脱炭素社会に関する提言を策定しています。

 湊氏は、大学では男女共同参画が進んでおらず、女性が活躍できる場をつくるための具体的なアクションプランを定め、さらに外国人や若手も取り入れた広い意味での人材の多様性を確保することが必須とされています。西尾氏は、ダイバーシティーこそがイノベーションを起こす根源とし、女性の研究者が企業や大学を循環しながらキャリアパスを積み上げるモデルの重要性を説き、ジェンダー平等を実現しながら、異分野を理解し、社会の課題を自分のこととして捉えることができる人材を育てたいとのこと。スタートアップのCompass(コンパス、神戸市)の大津愛CEOは、女性起業家の「女性」が取れる日を早く迎えたいとおっしゃり、就労や出産などをキーワードにした人材育成や制度設計を提案されています。

 海外と比較して、日本はこれまで部分最適を優先し、全体最適ができていないことが指摘されてきました。一人ひとりが日本全体がレベルアップするために何が必要かを考える教育実践を追究していきたいと思います。