校長ブログ

文理融合、教科横断

2022.01.07 大学進学研究
1月7日

 中高教育現場では、新学習指導要領に掲げられた内容と現在の大学改革を見据えながら時代のニーズに合う学習指導をすることが肝要です。今回は保護者との対話からです。

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Tさん: 文系学部に進んだという大学生が「論の芽」で、一旦、文系学部に入った学生は理系分野の興味がある授業をとることができず、学びたいことが学べないと述べているのを目にしました。大学時代は、興味・関心のある本を読み、様々な人と関わりながら、視野を広げ、人間性を磨いて行く時期。そして、社会が直面する課題を意識しながら将来の展望を描くことが大切だと思います。文系であれ、理系であれ、学生はもっと自由な学びの選択ができればと思うのですが...

校長:大学は高校生活で培った学びを踏まえ、答えが1つでない問題に取り組み、社会に貢献でするスキルや最適解を探究する素養を身につけるところです。その意味で、文理の壁をなくして幅広く学べるカリキュラムがあれば理想ですね。実際、多くの大学が文系と理系に別れている以上、高校で文理選択せざるを得ないのですが、最近では文理融合的な取り組みをする大学が増えてきており、グローバル社会に貢献する人財を育てるための大胆なカリキュラム改革、入試改革を断行しています。

Tさん: それを聞いて希望がもてました。大学入試もそのあたりを意識したものになるんでしょうか?

校長:そうですね。入試に合格するという短期的目標だけではなく、その先を見据えた高校教育のあり方が模索され、新学習指導要領にも反映されています。

Tさん: そのひとつが「主体的・対話的で深い学び」というわけですか?

校長:その通りです。地球温暖化や経済格差など、我々の目の前には正解がない難問が山積しています。新学習指導要領でもすぐに陳腐化してしまうような知識でなく、課題に果敢に挑戦していくための知恵を身につけていく必要性が述べられています。しかし、現状、高校生は限られた時間の中で受験対策をしなければならず、ある程度、科目を絞り込むからこそ大学に合格しているという現実もあるのです。その意味で、教科担当の先生方に意識していただいて授業のあり方を精査してもらうというところがポイントでしょうね。

Tさん: 自分が高校生のときは、高1で文理選択が行われていました。当時から数学が苦手だから文系、英語が苦手だから理系というような選び方をする風潮があり、その傾向は今でも続いているように思います。私は英語・国語・日本史の勉強だけで私大の経済学部に進みましたが、入ってから数学は必要だったし、英語ももっと勉強しておくべきだったと後悔しました。友人の中には、数学が苦手で経済学部を選んだものの、授業についていけなくなって留年したり、"一応" は卒業したものの、仕事に就いても仕事になじめず退職する人もいました。自分の子供にはこのような経験はさせたくないと思ってどの教科も捨ててはいけないと言い続けているんです。

校長:大切な事です。確かに、経済学や政治学などの分野では統計的分析をするのはごくふつうのアプローチであり、数学Ⅰ・Aがわからないと授業の理解が難しくなってしまいます。文系、理系のどちらに進まれようと、高校で学習する内容はすべて実社会の中では必要なものばかりですから、入学=卒業ではないといった現実を認識し、大学に行く目的を考えるような進路指導を展開することによって進路選択のミスマッチを回避しなければならないと思っています。

Tさん: 是非、お願いします。私だけでなく、多くの人が御校の改革に大きな期待を寄せているので頑張ってください。ところで、理数選択の制度はいつ頃始まったものなのですか?

校長:センター試験の前に行われていた共通1次試験が導入された1979年以降です。当時、受験生は増加の一途にあり、大学の序列化が進み、世間は大学の合格実績で高校を選ぶ時代でした。共通一次の時代は、大学進学率が5割に満たず、高校生の気質も将来を展望し、やりたいことが明確な、志をもった生徒が多かった気がします。しかし、今や大学進学率が6割となり、学ぶ目的や学習内容も多様化し、これまでと違ったやり方が求められているのは事実です。

Tさん:「明るく楽しい女子校」創りに向けて様々な改革がなされ、次々に成果が出てきているのを見聞きすると保護者としての期待も膨らむばかりです。

校長:ありがとうございます。期待してください。