校長ブログ

大学選び

2022.01.22 大学進学研究
1月22

 今回は、高2生を持つ保護者との対話からです。


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Oさん:いつもお世話になっています。長女が4月から高3になるのですが、大学受験のトレンドが変わりつつあると聞いています。大学の受験勉強は社会への第一歩であり、目の前にある勉強と将来、社会に出たとき、様々な場面で求められる力との間に共通点があることに気づく絶好の機会だと思うのですが...

校長:その通りだと思います。受験勉強を通じて"未来のあるべき姿"を自問自答することは大切なことです。生徒たちには各自の自己実現に向けて、最後まで第1志望にこだわり、納得のいく受験をしてほしいと言っています。ただ、大学入試改革に対する不安やコロナ禍の影響で"難関"を言われる大学をねらえる層でも志願先を変える安全志向は顕著になってきているのは事実ですね。また、地元志向も強まっています。

Oさん:AO・推薦入試などの名称も変わったとか?

校長:はい。AO入試は「総合型選抜」に変わり、これまで調査書や入学希望理由書、活動報告書や面接などが主で、学力テストを課されない場合が大半でしたが、今後は大学入学共通テストや大学の個別のテスト、外部の資格検定試験など、何らかの学力テストを組み込むところが増えています。「総合型選抜」の出願は9月以降、合格発表は11月以降になります。これまでの推薦入試は「学校推薦型選抜」に名称変更、出願は11月以降、合格発表は12月以降になります。いずれにしても大学が公表している入学してほしい人物像であるアドミッション・ポリシーに合致しているかどうかを見極めることが先決です。

Oさん:大学入学共通テストですが、出題の形式は変わっていくのですか?

校長:新学習指導要領に基づいて作問されるのですから出題形式は変容していく可能性があります。複数資料やデータから考察させる問題や正解がない問いに対する最適解を求める問題も含まれるでしょう。同時に、各大学の個別試験を含めた入試全体が、知識だけでなく、思考力や表現力を重視する方向性です。

Oさん:いつ頃までに受験先を決めておかなければならないのでしょうか?

校長:現段階で方向性だけは決めておく必要があるでしょう。

Oさん:受験や入学に関してどれくらいの費用が必要でしょうか?

校長:行きたいと思う大学のHPで入学金や学費などの費用がいつ、いくら必要なのかを調べ、独自の給付型奨学金や学費免除などが受けられるか否かも確認しておかれた方がよいでしょう。国の教育ローンを受ける場合は審査に時間がかかります。合格通知を受け取ってからの申請では間に合わないこともあります。受験料を払った段階から申し込めるので、早めに申請しておいた方がよいかもしれません。

Oさん:大学選びのコツをお願いします。

校長:偏差値やブランドではなく、学ぶ内容、サポート体制などをじっくり調べ、オープンキャンパス等にも参加した上で自分に一番合うと思う大学を選んでほしいと思います。

Oさん:私はバブル崩壊後の就職氷河期世代です。大学時代は就職活動がたいへんでした。大学に入るときは志望校でなくとも、とりあえず偏差値の高い大学に入学して資格をとり、就職に備えるという風潮でした...

校長:一部の最難関を除き、大学のランキングや入試制度は多様化し、親世代の価値観では選びきれなくなってきているように思います。偏差値や大学名以上に重視されるのが面倒見の良さ。大学の学習内容だけでなく、必要に応じて高校でのつまずきまでさかのぼり、個別に基礎から学び直しをサポートするといった取り組みをする大学、初年次教育やゼミ等を充実させて、学生個々の進路希望を実現させている大学に人気が集まっていますね。

Oさん:就職事情もかなり変わってきたように思えるんですが...

校長:企業の担当者数名に聞いたところでは、浪人や留年をしているからといって、エントリー段階で落とされることはまずないと言っていました。海外で働きながら世界をまわっていたなどの体験ならむしろプラスに作用することも多いようです。親世代なら、偏差値の高い大学を卒業すれば、就職も有利と考えがちですが、最近では、企業が大学の偏差値で学生を選別することがなくなりつつあるとのこと。かつて学歴が就職に直結した時代は高度成長期であり、情報処理能力が問われる仕事が多く、高学歴の学生はそうした能力にたけているため評価されたそうです。しかし、デジタル化が進んだ現在、単純作業はAIを始めとするコンピューターが行うため、社員に求められるのは新しい価値を生む創造力とのこと。その意味で、学歴と仕事力での相関関係はないという考え方が定着し、大学名ではなく、その「人となり」で採用するのが企業のポリシーです。

Oさん:私も企業に勤めているのでそれはよくわかります...

校長:大切なのは大学で何を学び、できるようになったか。新卒採用の面接で重視されるのは大学名よりも"人間力"そのものです。情報系や建築・土木系、電子・機械系が人材難で即戦力となれる技能を身につけられる大学・学部・学科は有利ですが、ビジネス系は大学・学部・学科は関係ないという声が聞こえてきています。