校長ブログ

アメリカのSTEM教育

2022.01.28 グローバル教育
1月28

 Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を総称する STEM 教育は、2000年代にアメリカで始められた教育モデルであり、現在、多くの国で取り入れられています。EdTech 教育が進められている日本でも注視すべき分野となっています。その他、芸術分野を加えたSTEAM、環境教育を加えた eSTEM (environmental STEM) などもあります。

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 アメリカで STEM という造語が使用され始めたのは、ハイテク技術者の不足解消に向けての教育政策が提案されたのが契機。当時のカリキュラムには STEM 教科を統合的に教えるシステムはなく、幼稚園や小学校の段階で自然科学や社会科学への興味・関心を付与し、その分野に精通した人材を育成することが公教育の政策課題だったようです。イギリスでも BBC が小型のボード型コンピュータ100万台を小学生に無償配布し、韓国やシンガポールなどでも国策として STEM 教育を推進、IT 産業をバックアップしていこうという動きが加速しています。日本でも小学校でプログラミング教育が始まりました。

 アメリカの STEM 教育では、工学分野の学習を小学校段階からスタートすることが奨励され、中学校や高校では科学や数学に含まれる工学分野の要素を拡大することも可とされています。オバマ大統領の時代には、理数教員を養成するための制度が拡大。全米アカデミーズは理数教育の改革に伴う教師力の強化、STEM 分野の学位取得を希望する生徒の進学支援を謳い、NASA は宇宙探査を担う科学者・エンジニア・数学者の育成を目指して、STEM 教育を推進。カリフォルニア州では STEM に関する課外プログラムを実施し、生徒の学力向上につながるかを検証しています。フロリダ州では STEM 教育に特化した工科大学としてフロリダ・ポリテクニック大学を創立。ブッシュ大統領は先端的な研究開発プログラムのための基金を大幅に増額し、STEM 科目の高等教育を受けた教員の増員などを示唆しています。

 2009年まで実施されていた NASA Means Business コンペティションでは大学生が中高生に STEM 教科を学ぶ意欲を与え、アウトリーチ活動を促すためのプロモーションプランを競っています。非営利組織としての The STEM Academy は、少数マイノリティ・低所得階層児童の学力向上、学力格差の解消、中退率・高校卒業率の引き上げに尽力。Project Lead the Way はアメリカの約5,000校で「工学への道」(Pathway To Engineering)や「テクノロジーへの扉」(Gateway To Technology)という名の STEM 教育プログラムを展開するだけでなく、教員の能力開発を行い、継続的サポートを提供しているとのこと。

 今の子供たちが成長し、活躍する社会では AI の進展によって単純な仕事は機械に置き換えられ、職業は大きく変化すると言われています。そこで求められるのがシステム開発ができる IT 人材。アメリカでも中国やインドの高学歴エンジニアが活躍しているそうです。本校においても時代の要請である教育の潮流についての研究を進め、成果が期待できるところは積極的に取り入れていこうと思います。