校長ブログ

AI医師の代理診療

2022.02.26 トレンド情報
226日

 最先端のITやロボットの技術を組み合わせ、障害や病気を克服したり、身体能力や五感を向上させる「人間拡張」の技術が広がっています。

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 すでに米国では、AI医師による高度な健康管理が実績を上げています。日本では暦本純一氏(東京大学教授)によってこの概念が提唱されました。古くは荷物の運搬の負担を軽減させるアシストスーツなどがその典型ですが、今やAIが薬の時間を知らせる診療支援やAI医師の管理下における療養など、代理人の役割も果たすというから驚きです。     

 遠隔体調管理技術を手掛けるアジェンタ(米カリフォルニア州)は、宇宙服のセンサーで体温や心拍などの身体情報を自動収集し、AIが分析した後、運動や食事、休憩などの指示を与えて宇宙飛行士の健康を維持するソフトを開発しています。これは、AI医師の発想を宇宙から地上へ応用した事例であり、すでに州立病院等に導入されているようです。

 今やAI医師は、心不全の患者が再入院する割合を大きく減らし、糖尿病、新型コロナウイルス感染症、妊婦の母体管理など、対象を拡大しており、医師の目が届かなかった場所で効果を出している点が特徴です。   

 ローガン・ビジョン(カナダ)は、消防士が薄暗い場所や煙が充満した場所でも、対象物を識別できる技術を開発しています。米シンクロンは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などで発話ができない人でも脳に埋めたチップで電気信号を読み取り、コミュニケーション能力を拡張する技術開発を進めています。

 人間拡張技術の市場は、5年間で年平均21%成長、2026年には約3400億ドルに拡大すると見込まれているとのこと。(マーケッツアンドマーケッツ)当然、多くの企業が事業化を模索し、研究組織が立ち上げ、ITなどを駆使して、深刻な人手不足や労働環境の悪化などの解消に向けての開発を進めています。進捗状況に注目したいと思います。