校長ブログ

注目される研究領域②:最近の考古学研究

2022.02.23 トレンド情報
2月23

 教科横断的アプローチによる探究学習は、新学習指導要領の骨子とも言えるものですが、これはなにも目新しいものではありません。中高での「勉強」から大学での「研究」にレベルアップし、社会に貢献できるスキルを磨けば磨くほど、その重要性を再認識することになります。

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 今日は考古学における最新の科学技術を駆使した研究についてです。考古学と言えば、文献を調べ、現地に赴き、遺物を発掘し、研究者の経験と勘を頼りにするといったイメージが強いのですが、近年では、タンパク質の成分を調べて絹の起源を調査する、精度の高い画像処理でピラミッドの立体像を合成するなど、技術革新を活用した分析や計測によるアプローチが行われています。

 これまで考古学の分野では、骨や歯の形から動物の種類を特定化していました。しかし、現在、遺跡に残る古い骨や動物のタンパク質を解析して研究を進められています。奈良女子大学の中沢隆教授は、アゼルバイジャンとヨルダンで発見された8千~3万年前の動物の骨や歯に含まれるタンパク質を調べ、羊とヤギの分布や飼育していた品種を知る手がかりにしているとのこと。質量分析による手法は、砕けて形が分からなくなった骨や歯まで調査対象として使えるそうです。この手法の開発では、島津製作所の田中耕一氏らが2002年、ノーベル化学賞を受賞されています。

 質量分析への注目は、奈良県桜井市にある3世紀ごろの纒向(まきむく)遺跡から出た絹の分析から。中沢教授は、絹の発祥は中国という定説に対し、日本に古くから養蚕があった可能性を示唆されています。筑波大学の谷口陽子准教授は、アフガニスタンのバーミヤン遺跡における壁画の絵の具に馬のタンパク質から作られたニカワが含まれていたことを発見し、仏教壁画の歴史に一石を投じています。さらに、シルクロードを通じて、油絵が欧州に伝わった可能性も指摘されています。

 立体画像を作る3Dスキャナーや小型無人機ドローンも考古学の研究に貢献しています。名古屋大学や長崎県立大学の研究者は、ピラミッドを23ミリメートルの誤差で読み取り、立体画像を作成しているそうです。また、ドローンによって、ギザの3大ピラミッドやクフ王のピラミッドなども撮影。その他、カンボジアのアンコール遺跡やペルーのマチュピチュ遺跡の調査でも3Dスキャナーやドローンが使われているそうです。  

 時代の流れとともに、多様な分野がグローバルなレベルで融合して研究が進展し、今まで以上に高度な次元での成果を生み出し、社会貢献しようとしています。中高現場においても、確かな基礎学力を構築した上で、探究をはじめ、より教科横断的な取り組みが可能になるカリキュラムを策定していこうと思います。