校長ブログ

共通テストの作問

2022.04.16 大学進学研究
4月16日

 大学入試改革後の2回目にあたる大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の本試験が予想外の低得点であったため、得点差がつかず、合否判定への影響などが指摘され、作問方針が問われています。

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 平均点が下がったのは、全30科目中19科目。数学Ⅰ・A37.96点)、日本史B52.81点)、化学(47.63点)、生物(48.81点)などの7科目は、センター試験が実施されていた過去の結果を見ても最低となりました。特に、数学Ⅰ・A19.7点、数学Ⅱ・B16.9点下がっています。

 高得点層が減り、低得点層が増えると得点分布の「山」は当然、左へ移動します。そうすると、得点差がつかなくなり、合否判定がしにくくなります。数学が得意な学生を採るために配点を高くしても、他教科の得点で合否が決まってしまうということになってしまうのです。

 言い換えれば、安定した難易度があってはじめて、テストへの信頼性・妥当性が担保されるのです。河合塾の推定によれば、5教科7科目の合計(900点満点)では文系型507点は48点、理系型510点は61点のマイナスとなり、大幅低下、5教科7科目になった2004年度以来最低です。

 共通テストの問題はセンター試験より大きく変容し、資料や図が多くなり、分量が大幅に増えました。今回、数学Ⅰ・Aの得点が下がったのは読解や計算に時間がかかる問題が増えたため。この増加に意味があるのかどうか。数学Ⅰ・Aではヒストグラムと箱ひげ図を見てそれに合った散布図を選ぶ問題など、散布図に描かれた点を数え取るといった作業が数学力を測るのにどれほど意味をもつかということです。

 作成方針の背景にあるのが、思考力・判断力・表現力などを駆使して解答づくりをする「主体的・対話的な学び」の実現に向けたメッセージ性。テスト理論の専門家は、共通テストが基礎学力を測るものである以上、このような要求は少し厳しいのではないかということと教科の学力を測る力が落ちている可能性が指摘されています。

 今後、外部評価も踏まえ、改善が進められるのでしょうが、難易度だけでなく、作成に対する考え方も精査する必要があるのは自明です。昨今、多様性に富む受験生を1つの試験で測ることができるのかという根本的な問題も含めて考えていきたいものです。