校長ブログ

主体的・対話的で深い学びに向けて

2022.05.23 教科研究
5月23日  

 今春、入学した高1から適用される新学習指導要領は、これまで潮流であった暗記一辺倒であったあり方を廃し、ディスカッションを取り入れた協働によって思考力、判断力、表現力を育む探究型の取り組みが標榜されています。

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 文科省は、2023年度から高2が使用する教科書の検定で239点が合格したと発表しました。学習指導要領の改訂に伴い、「主体的・対話的で深い学び」をめざし、内容は教科横断的な色彩が濃くなり、要求される背景知識の幅も広がりました。トピックは、新型コロナウイルスなど、最新の事象が多く取り上げられているのが特徴です。

 例えば、英語の論理・表現IIでは、学校生活におけるニューノーマルをテーマに、統計学や確率の知識をベースにしたオンライン学習と対面学習の利点と欠点の考察などが盛り込まれています。論理国語では、「コロナ後の都市のテーマは『衛生』ではなく『自由』である」などと書いた建築家の文章を読み、どのような「自由」が考えられるかを話し合うページが登場しています。地理探究では、10ページちかくも探究の手順が示され、日本の地理を巡る諸課題についてデータを集め、関係者にヒアリングしてリポートにまとめる手法だけでなく、観光業におけるコロナ禍の影響、政治・経済では財政におけるコロナ禍の影響が扱われています。化学では「凍らせたスポーツドリンクのとけ始めが甘いのはなぜか」など、身近な事象から教科内容を掘り下げる「探究実験」の例が述べられ、仮説や計画手順を立てることの重要性が促されています。 

 主体的な学習の充実に向けて、当然、モデル授業の蓄積が不可欠です。すでに多くの自治体では支援体制を打ち出し、研修会を開催、授業の実践例を共有する仕組みを作りあげています。

 今回の改訂は、単調な暗記に依存する問題設定を廃し、探究型学習の定着に焦点をあてていますが、その背景には社会に出た後に自ら考えて行動する土台を養うというねらいがあります。これまでの教育改革を振り返ると、「考える力」の育成を目途とし、学習内容を削減した「ゆとり教育」や点刻みの入試からの脱却を目指した高大接続改革など、理念先行による失敗が繰り返されてきました。教育改革の″光と影″にも留意しながら本校独自のティーチング・メソッドを開発していきたいと思います。