校長ブログ

地震のメカニズム

2022.05.12 トレンド情報
5月12日

 日本海溝の海底下の地層から平安・室町時代に発生したと思われる地震の痕跡が発見されました。深さで言えば、7,500メートル。海の底には地震や津波による堆積物が残っている可能性があり、現在、多くの研究機関がその解明に取り組まれています。

DSC00055.JPG

 昨今、南海トラフ地震の発生が想定される中、体に感じない「スロー地震」の存在に注目が集まっています。スロー地震は、東日本大震災の直前にも起きていたようですが、巨大地震につながるという指摘がなされています。日本列島では4つのプレートが接し合い、海側のプレートが陸側のプレートの下に沈み込み、プレートがひずみに堪えきれなくなると跳ね返って地震が発生するというメカニズム(海溝型地震)ですが、スロー地震はプレート境界がゆっくりとずれ動くため、体に感じるほどではありません。

 スロー地震は、巨大地震が繰り返されてきた米国やチリ、ニュージーランドなどの環太平洋地域でも数多く発見され、南海トラフ地震が想定される震源域でもスロー地震が起きていることが明らかになっています。国内では、観測網の整備が進み、陸・海・空から国内の地殻変動が常時監視されています。

 日本の地震予知の歴史は1960年代にスタート、「地震予知研究計画」が策定され、「東海地震説」(1976)に備えたものの、予測は外れ、阪神大震災や東日本大震災などの大規模な地震が発生したのは周知の通り。以降、予知を前提とした対応は断念されるに至り、異常な現象が観測できた場合には臨時情報を出し、住民に警戒を促す仕組みに変更したという経緯があります。

 2019年、産業技術総合研究所は、静岡県の太田川低地での津波堆積物調査を通じて、これまで確認されていなかった7世紀末と9世紀末の東海地震の発生を確認したと発表しました。東海地震は711世紀に津波が発生したことを裏付ける証拠がなかったものの、静岡県立磐田南高校の地学部の生徒たちが太田川の河口から約3キロ上流の工事現場で、貝の化石や小石の混じった白っぽい砂の層を見つけ、それが共同研究のきっかけとなり、成果につながったそうです。

 「海溝型地震」に対して、陸のプレート内部にひずみが生じて起きるのが「活断層型地震」と言われ、1995年の阪神大震災や2016年の熊本地震がそれにあたります。海溝型は数十年から数百年単位で繰り返すのに対し、「活断層型地震」は数千年単位の周期となっています。

 日本海溝の北から南まで約500キロにわたって計18カ所の地点を調査する国際計画があります。日本海溝では巨大地震が長周期で繰り返し起こっていると考えられ、政府の地震調査委員会は、「同じ場所で同じような地震がほぼ定期的に繰り返す」という仮説を立て、本格的に海底堆積物の研究など、様々な取り組みを進めています。