校長ブログ

教科横断的アプローチ:数学の場合

2022.05.18 教科研究
5月18

 数学に関する興味・関心が高まっています。「とてつもない数学」「美しい数学入門」「東大の先生!文系の私に超わかりやすく高校の数学を教えてください!」「生と死を分ける数学」といった本が人気です。今やDX時代、AIやデータサイエンスがビジネスで不可欠とされ、その基盤とも言える数学の重要性が見直されている証左と言えます。

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 数学を学んで問題解決力を高めたいと思う社会人を対象にした数学塾を開催し、「とてつもない数学」の著者である永野裕之氏は、震災やパンデミックで先が見通せない世の中とは無関係ではないと述べられています。

 近年、大学での数学研究は産業界と連携し始めています。理化学研究所は、数学を応用して企業の様々な課題解決に資するベンチャー会社「理研数理」を立ち上げました。これはアメリカのグーグルが多くの優秀な若手数学者の力をかりて、生産性を挙げる取り組みをしているのと同様です。

 数学と言えば、昔から"美しさ"や"自由さ"を重視してきた感がありますが、現代社会の諸相が変容をもたらしています。ジャズピアニストであると同時に、数学教育に従事してきた中島さち子氏は「ひとつの着想から自分が開ける瞬間がある。数学は世界へのアプローチを変える」とおっしゃっています。1本の補助線が既成概念を取り払い、新しい世界が見えてくると...。日常生活でもちょっとした"きっかけ"が固定観念を超えた視点を与えてくれることを考えれば納得できます。

 京都大学高等研究院の院長で、数学界最高の栄誉と言われるフィールズ賞を受賞した森重文氏は、数学には「論理的な美しさ」と「論理をこえた発想の美しさ」があると述べられています。そして、論理をパウル・クレーの絵に例え、数学という学問が有用性とは隔たったものではなく、時には感性が必要であり、それが日常感覚を超越した発想に結びつくということを示唆されています。新学習指導要領において、探究教育に代表される教科横断的、学際的(interdisciplinary)なアプローチが求められる時代だからこそ、文系・理系に関わらず、様々な領域の書物を読んで背景知識を強化してほしいものです。