校長ブログ

気候難民

2022.05.28 トレンド情報
5月28日  

 温暖化による異常気象によって住む土地を失った「気候難民」が急増しています。ジュネーブの国内避難監視センターによると、気候難民は2020年時点で3,070万人、武力紛争などの難民980万人の3倍を超える数となっています。

DSC03400.JPG 

 地球の温暖化は年々、深刻さを増し、異常気象が続いています。結果、各地で住まいを追われる気候難民が増加しているのです。その規模は武力紛争が原因で生じる難民の3倍、2050年までに2億人を上回るそうです。  

 ニアル・ディートマメル氏(国連難民高等弁務官事務所)は、南スーダン北部の雨期の洪水の回数と規模の異常を指摘しています。昨年の洪水では80万を超える人が被災し、約半分が難民になった模様。滑走路は4年前から水没したままであり、家・農地・家畜は水に奪われ、食糧は不足し、生活できる状態ではなくなっているようです。さらに、紛争もあり、厳しさは一層、増しています。

 世界気象機関(WMO)によると、洪水や干ばつなどの自然災害は、1970年代の10年間は約700件だったものの、2010年代は約3,000件にまで増加。さらに、地球温暖化もあり、事態はより深刻化しています。WMOは気候変動による経済損失が2019年までの10年で日本円で約180兆円となり、この40年で8倍に増えたと試算しています。これは、災害で都市インフラや職場、住居など生活基盤を失い難民化する人が増えることを意味します。世界銀行によると、気候変動に伴い、移住者が世界各地に増加、2050年までに最大21600万人が難民化、サハラ砂漠以南のアフリカ、アジア太平洋地域、南アジアが続くと報告されています。

 現実的な問題として、一部の発展途上国しか気候難民の広がりを抑える有効な手段を打ち出せていません。国連事務総長特別代表の水島真美氏は、途上国は食糧危機や紛争といった喫緊の課題に対応しなければならず、防災の優先度は高くないので、先進国が貢献できることは多いと述べられています。 

 世界経済フォーラムの報告書では、気候難民を保護する国際的な枠組みが強調されています。国連も2018年、気候難民へのビザ発給など、国境を越えた移住支援の必要性を説いていますが、先進国は途上国からの移住者の流入を危惧し、気候難民の受け入れに慎重になっているようです。自然災害に国境はありません。温暖化ガスの排出削減、災害予測、インフラ整備、防災協力など、グローバル社会が取り組むべき課題は山積しているのです。