校長ブログ

世相を読む

2022.06.22 トレンド情報
6月22日

 大学トップが入学式の式辞で語ったフレーズには、時代を映し出すキーワードが盛り込まれています。世相を読み取っていただきたく思います。

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 上智大の曄道佳明学長は、ロシアのウクライナ侵攻に際し、「改めて国境の存在、地球市民の分断という課題を私たちに突きつけている」と述べられています。早稲田大の田中愛治総長は、「ウクライナ侵攻など、人類が直面する問題の解決策は教科書にも専門書にも記されていない。答えのない問題に自分なりの解決策を考え出せる、たくましい知性を鍛えてほしい」と言及されています。東京大の藤井輝夫学長は、ウクライナの学生や研究者らを受け入れる支援制度を設け、「世界に開かれた知的探求の空間を構築するという東大の使命を果たすことにつながる」と強調されています。

 現代は予測不能な危機の時代。その中で世界との対話や交流を維持し、協働によって問題解決への最適解を求める姿勢が不可欠であることがわかります。新学習指導要領に謳われる探究学習に直結します。

 また、民法改正で成人年齢が18歳へ引き下げられ、新入生の多くが入学時点で成人となったことを鑑み、大人としての自覚を促すメッセージも見られました。大阪大の西尾章治郎学長は、「成人年齢引き下げの第一世代。社会に参加し、より良くする義務と責任が課される」と激励されています。福井大の上田孝典学長は、「負の側面もあれば、起業家として活躍しやすい面」を述べられるのと同時に、「問題を抱え込まず、周りの方々の意見を聞くこと」の大切さを強調されています。これは大学生のみならず、高校生にもあてはまることです。

 九州大学の石橋達朗学長は、アフガニスタンで殺害された非政府組織(NGO)「ペシャワール会」現地代表の医師であり、卒業生である中村哲さんの「飢えと渇きは薬では治せない」という一節を紹介し、「確固たる生き方と揺るぎない思いをつないでいきたい」と述べられています。北海道大学の宝金清博学長は、「卒業の時には、世界が今の危機を脱して、新しい平和と繁栄の時代の入り口に立っていてほしい」と言われていますが、これは教育に携わる者すべての想いとも相通じるものです。

 贈る言葉は、「成人という言葉には2つの意味がある。1つは成年に達して大人になるという意味。もう一つは努力して立派は人に"成る"という意味」です。