校長ブログ

日本の研究力

2022.08.16 トレンド情報
8月16日

 文系・理系を問わず、若手研究者が小粒化したと言われています。政府は、国立大運営費交付金の改革論議を始めるなど、研究支援策を設ける方針を打ち出していますが、コロナ禍で科学研究の危機が浮き彫りにされた格好になりました。社会が知識創造をどのように支えていくのかが、今後のポイントになりそうです。

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 浜口道成氏(科学技術振興機構元理事長)は、日本の新型コロナ関連の論文が16位である現状を振り返り、若手研究者がさらに自由に取り組める環境再生が必要と述べられています。また、大学への投資が減っているにもかかわらず、科学研究の領域は広がりを見せており、それに対応しようとするためにかえって狭い領域の専門家が増えてしまうとも言及されています。さらに、日本にはウイルスを専門とする研究者が非常に少ないことを付言。同時に、研究組織が小型化し、一人の役割が重くなるにつれ、助教などが留学することも難しくなっている状況を例示されています。

 解決策としては、政府やJSTが特定の課題や短期目標を設けず、若手研究者個々の好奇心に基づく「創発的研究支援事業」を推進していることやコロナ禍を受けて、グループ研究によって社会問題の解決新しい目標そのものを公募する事業「ミレニア」が開始されたことなどを挙げられています。

 世界全体の新型コロナウイルス感染者は5,500万人を超え、130万人以上が亡くなるなど、世界全体が苦悩しています。人類の未来が変容しようとする中、科学技術こそが持続可能性を生み出す原動力であることは自明ですが、今まさに日本の科学の対応力が問われているのです。

[参考]藤井輝夫氏(東京大学総長)は、グローバルな課題にタイムリーに反応することを重視、大学の総合力を生かして、学生の学びのプロセスを社会や世界とつなげていくことが不可欠と説かれています。新型コロナへの対応としては、「デジタルキャンパス」を挙げられています。国際化については、オンラインに移行してもある程度は交流可能であり、コロナの感染状況でいえば日本は海外よりも相対的に安全である状況から留学生を呼び込むチャンスと捉えることもできるされています。