校長ブログ

新コース立ち上げ特集㉘-ラウンド制指導

2022.10.29 グローバル教育
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 英語の指導法の中には、1冊のテキストを年間で繰り返して使用する「ラウンド制指導」があります。かつて横浜の市立中学の先生方が推進したというこの方法は、まずは聞いて耳から覚え、何度も同じテキストを使いながら4技能をバランスよく鍛え込んでいくというものです。   

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「聞く」目的は、文字に頼らず理解する姿勢を養うこと。特に、読まなければわからないという学習者のステップアップに役立ちます。流れは、一つのテキストを用いて、① 英語を聞いて、内容を推測 ➡️ ② テキストを見て、音と文字を一致 ➡️ ③ 音読して、書き写す ➡️ 英文の空所補充 ➡️ リテリング(Retelling:内容を自分の言葉で伝える)という5ラウンドという構成です。新学習指導要領と対応させれば、思考 ➡️ 判断 ➡️ 表現に相当します。(ラウンド数は教材の内容によって変わります)

 一般に、「生きた」英語が苦手と感じている人はテキストがないと不安になったり、なんとなくわかるものの、話すとなると自信がないといった悩みをもつものです。しかし、この方法で学習すると、内容を推測する力がつく、正しい発音で読める、正確な英文を書ける、文構造の理解を深められる、自分の言葉で伝えることができるなどの効果が期待できます。また、自己調整学習の中で1日1ラウンドを短時間で5日間といったペースで、実践することもできます。

 一つの教材をさまざまな角度から学習させるこの指導法は、語彙や文法の内在化と言語情報処理の能力を高めることによって、教材内容を理解しつつ、4技能をバランスよく指導できるのがポイントです。高校のリーディングに置き換えれば、語彙・語法・文法指導を徹底した上で、

・様々なタスク(課題)を与えて読ませるうちに、内容理解が行われ、和訳にとらわれなくなる。
・タスクに応じて英文を読ませることになるので、読解量が増える。
・いくつものことを教えるのではなく、one thing at a timeを原則とするので授業の流れがぶれない。
・教師の説明時間を短縮し、生徒が活動時間を多く取ることができるので、能動的で、学習者中心の授業が展開できる。

 などの利点が挙げられています。ただし、タスクには書かれている事実を問うもの、推論を要するもの、生徒の意見を要するものなどを組み込み、取り組みを活性化しなければなりません。

 生徒が異なれば、到達度に合わせて指導法も様々。教える側は常に創意工夫が求められます。それが教育現場の醍醐味でもあるのです。本校においても、英語教育のみならず、あらゆる教科指導を展開する上で先達の取り組みを参考にしながら質の向上に努めていきたいと思います。