校長ブログ

生命の兆候がある惑星

2022.11.25 トレンド情報
1125

 これまで地球は、大気や水、適度な気温が偶然もたらされ、奇跡的に生まれた惑星と考えられてきた感があります。しかし、近代科学の発展に伴い、宇宙の観測が可能になり、生命が存在するかもしれない惑星があることが天文学者たちによって指摘されています。

DSC03452.JPG

 太陽系には8個の惑星があり、その中で生命が繁栄しているのは地球だけ。位置的にも熱や光を放つ太陽から適度な距離にあり、暑くも寒くもない状況だからこそ、生命に欠かせない水が存在し、生命が誕生するのです。(この領域をハビタブルゾーンと言います)

 観測技術の進歩は、さらに遠い宇宙に目を向けることを可能にし、結果、太陽とは別の恒星を取り巻くハビタブルゾーンに地球外生命が存在しうる惑星の候補が約20個発見されました。現在、太陽系がある銀河だけでも100億個以上あると想定されており、NASA(米航空宇宙局)の観測衛星TESSは探索を続け、さらに10年で20個ほど発見できる可能性があると見込んでいます。

 日本やベルギーなどの国際研究チームは9月、ハビタブルゾーンの中にある地球サイズの惑星を望遠鏡で捉えたと発表しました。成田憲保氏(東京大学教授)は、生命の兆候は遠い星では見えず、地球から観測できる位置にあることが重要と述べられています。生命の手掛かりは大気の成分ですから、大気を通過した光を分析すれば、その吸収度合いからその成分がわかるとのこと。酸素があれば、光合成をする植物まで存在する可能性があります。酸素は生命に有害な紫外線を遮るオゾンを作り出すのに不可欠ですからメタンの有無が微生物などがすむ証拠となるのです。また、惑星の地表が反射した光を分析する直接撮像法を活用すれば、反射光の変化から光合成の可否がわかり、植物が生えているもう一つの証拠になるそうです。

 滝沢謙二氏(基礎生物学研究所特任准教授)は、陸には赤い植物、海には緑の海藻や細菌がいるかもしれないと予測、地球でいえば太陽の位置に赤色わい星という種類の恒星がある確率が高く、地表には赤外光が降り注ぐと考えられています。また、地球のような陸がなく、海だけの惑星も想定されています。

 ハビタブルゾーンといっても、恒星からの距離だけで生命の有無を議論できるわけでなく、光が届かない寒い惑星でも、温暖化ガスをなんらかの形で身につければ気温が上がることがあり得ます。さらに、大気の成分や恒星の年齢といった条件も影響を及ぼすため、まだまだ考慮しなければならない点があるのは事実です。

 現実的には、観測技術はまだ十分でなく、NASAが今年の夏、観測をスタートさせたジェームズウェッブ宇宙望遠鏡でも酸素や植物は見えませんでした。天文学者たちは、日米など、5カ国が計画する世界最大級の望遠鏡TMTでの取り組みに期待しており、さらなる探究を模索しています。第2の地球や地球外生命といった話題もそう遠い話ではないのかもしれません。