校長ブログ

新コース立ち上げ特集㉜-大学入試問題の変化

2022.11.26 グローバル教育
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 かつて大学入試センター試験と言えば、筆記200点、リスニング50点という配点であり、筆記の占める割合が8割でした。内容的にも知識問題として音声・語彙・語法・文法そのものを問うもの、読解問題として小説では登場人物の心情の変化を読み取るもの、論説文では筆者の主張の読み取るものが主流を占めていました。しかし、2021年度からスタートした大学入学共通テストでは、リーディング100点、リスニング100点に大幅リニューアルされ、英語コミュニケーション力を重視するテスティングとなったことで作問に変容が見られるようになりました。

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 リーディングを鳥瞰すると、上記のような知識問題は姿を消し、完全な読解問題にシフト。その中で、youを主語にした問題文が多いのが目立ちます。つまり、受験生を設定されたコミュニケーション場面の主体とみなし、「あなただったらどう考えますか、対応しますか」と直接、問うているわけです。

 問題設定におけるsituation(状況)は多岐にわたり、書籍、ウェブサイト、案内文、記事、ブログ、雑誌など、様々なvehicle(媒体)を通してyouが登場します。全体として、具体的なコミュニケーション場面にまで昇華させており、受験者がどのくらい英語を使えるのか測る意味ではかなり工夫が施されているように感じられます。

 一方、リスニング問題では、第4問と第5問に「あなた」が登場するくらいで頻度は少なくなっています。しかし、読み上げ回数は第1問・第2問が2度読み、第3問~第6問は1度しか読み上げられません。また、イラストやグラフ、表も多く使用されており、単に英語を聞き取るだけでなく、目的に応じた思考力・判断力が問われる内容になっていること、さらに、アメリカ人だけでなくイギリス人や日本人と思われる話者が含まれていることを鑑みればよりリアリティーのある設問になっていると言えます。

 客観的に見れば、受験生にとって、状況を把握し、聞き取る内容を焦点化、音声情報と図・表・グラフと関連づけて正答を選ぶという認知プロセスは、一定のトレーニングを積まなければ得点化しにくいというのもまた事実。新学習指導要領がめざす4技能5領域の習熟とリスニング問題がどのくらい整合がとれているのか、検証すべき課題は残されています。