校長ブログ

睡眠不足

2022.12.29 トレンド情報
12月29日

 日本は米欧中に比べ睡眠時間が約1時間短く、結果、生産性が低くなり、利益率も低水準という研究結果が出ています。欧米のように、睡眠不足を個別の問題とせず、社会全体の問題として解決していく必要性に迫られているのです。

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 ユーザーの睡眠時間について調査(仏ウィジングス)によれば、2020年の日本人の平均は6時間22分と14カ国中最下位。フィリップス調査(オランダ)では睡眠に満足している人は29%であり、13カ国中最下位となっています。

 最近の研究では、短い睡眠時間は集中力を妨げ、逆効果になるという見方が主流を占めています。睡眠時間が不足し、ミスを起こしやすい状態を「睡眠負債」と言います。日本生産性本部によると、日本の就業者1人の労働生産性は38カ国中28位、G7で見れば最下位とのこと。睡眠を削って努力しても新たなアイデアは出にくく、成果につながらないと言われています。

 コロナ禍によって在宅勤務が増え、睡眠に充てられる時間が増えると期待されましたが、動画配信コンテンツ視聴やオンライン会議など、デジタル化の弊害が課題として残りました。山本勲氏(慶応義塾大学教授)は、睡眠を個人の課題にするだけでなく、政府が企業の行動を変容させる仕組み作りに取り組む姿勢が不可欠と述べられています。

 海外では、EUが退社から翌日の出社までの11時間を空ける勤務間インターバル制度を企業に義務づけています。この制度は、仕事の終わりから翌日の始まりまでに一定時間の休息を義務づけることで、社員の睡眠や生活時間の確保を促すもの。日本でも2019年から企業の導入が努力義務になっており、厚労省は2025年までに導入企業の全体の15%にまで高める目標を設定していますが、昨年の段階では5%未満。進まない理由としては、努力義務にとどまっていること、仕事量が減らない中、人手不足で追加の人員確保が難しいことなどが挙げられています。また、近年はモノとサービスの両面から睡眠の質を高めるための技術や製品を指すスリープテックも注目されています。

 日本はこれまで長時間労働をいとわないことで高度経済成長に貢献してきた歴史があり、いまだにこうした意識が拭いきれない面があるのもまた事実。その中で睡眠は個人の問題として捉える傾向があります。働き方改革の推進と同時に、労働生産性の向上をどのように改善するかはまさに制度設計に他ならないのではないでしょうか?