校長ブログ

コロナ禍の教訓

2022.12.09 トレンド情報
12月9日

 コロナ禍は、在宅勤務を余儀なくし、日常生活における時間の使い方に変化をもたらしました。対面の機会が減った分、相手の情報を得にくくなり、結果、改めて、人間関係における「協調」の重要性を見直す機会を与えてくれました。

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 かつて、人が狩猟や採集生活をしていた頃、協調する相手は血縁者だけでした。しかし、農耕が始まると狭い土地の中で、血縁関係がなくても他人とも様々な面で協力しなければならなくなったのです。見ず知らずの人と協調するには、信頼関係が築けるかどうかがポイントになります。社会の規模が拡大すれば協調する人の数は増えますが、信頼に値するかどうか見極める必要があり、そのためには第三者の評判に依存せざるを得ません。

 コロナ禍で人の情報が入りにくくなった今、ネット情報だけでは正確さに欠けます。大槻久氏(総合研究大学院大学准教授)らは、数理生物学の手法を使い、コンピューターで評判が形成される過程をシミュレーションしています。

 具体的には、評判がよい、悪いにグルーピングし、その人に協力する、しないで評判がどのようになるかを4条件で調べています。当然、評判がよい人に協力すれば良好な協調関係を築けるわけですが、悪い人に協力しても評判が下がらないルールを作れば協調関係を築けることが分かったそうです。

 ふつう、悪い人に協調した人の評判は悪くなりそうですが、誤解や行き違いで風評が一人歩きしてしまうこともあります。また、悪いと評される人に協調したことをとがめると、かえって、周囲を混乱させ、まともな評判が作れないと述べられています。

 農耕社会が形成されてから人は日常生活の中で多様な人と対面してきました。そして、第三者からの情報だけでなく、コミュニケーションを通じて相手を知ってきました。しかし、近代化と共に、職業は細分化され、分業が進みました。ネットやSNSの普及した今、信憑性が低い情報が増え、人と人との直接的つながりが希薄になり、コロナ禍が追い打ちをかけた状態です。 

 感染リスクを抑えて協調関係を築くのは容易ではありませんが、最終的には自分の目で相手を見極めることが不可欠。その意味では、オンライン会議システムを駆使したネット上での「対面」などは一助になるはずです。1万年にわたって社会を維持した人類は、相手を信用する生物へ変化しつつあるのです。コロナ禍は、人が生まれもった協調関係に危機を突きつけていますが、どう克服するかは人にがかっていると言えるのです。