校長ブログ

起業家教育

2022.12.01 教科研究
12月1日

 文科省は、将来のイノベーションの担い手の育成に向けて、次年度から起業家教育の支援対象を小中高に拡大する方針を打ち出しています。

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 今、経済成長や社会課題の解決に向けて起業できる人財育成が求められています。これまで国は起業家を増やすため、主に大学生を対象に講座や研修、民間企業との連携プログラム、資金援助を行なってきました。これは探究心や創造性を養う起業家教育は時代の要請に対応する取り組みですが、海外と比べるとその動きは低調であり、現場の認識もばらつきがあった感は否めません。  

 グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(GEM)の調査(2020)によれば、日本では1864歳のうち起業活動率(起業準備中の割合)は6.5%2010年(3.3%)より上昇したとはいうものの、米国(15.4%)や韓国(13.0%)とは開きがあります。日本の場合、大学生が起業家教育を受ける前に就職先を決めているケースが多いという現状を考えると早期の取り組みが不可欠です。そこで、文科省は低年齢からの起業家教育を推進すべく、次年度から小中高生向けのカリキュラムの開発を推進していくことにしたようです。具体的には、授業に組み入れるのではなく、大学や自治体が中心となってセミナーや体験プログラムを提供するとのこと。

 近年、早期の起業家教育は世界の潮流になりつつあります。フィンランドは小中学生にアントレプレナーシップ(entrepreneurship:起業家精神)を示し、職業体験などのプログラムを導入、すでにスタートアップ企業が誕生しています。日本でもすでに横浜市が地元企業と連携して小中高校で商品開発や地域の課題解決を考えるプログラムを進めています。ちなみに、GEMの調査(2021)では、GDPの上位19カ国のうち、起業家教育に対する専門家の評価はフィンランドがトップで、日本は最下位です。

 起業家教育の明確な定義はありませんが、OECDによると、① 事業機会を見つけ会社を設立し、成長させるといったビジネスの始め方の指導、② 個人の創造力や自主性、リーダーシップの育成とされています。また、EUは起業家教育に対し、伸ばすべき能力としてチームワークや経験から学ぶ姿勢、不確実性やリスクへの対応力といった15項目を示しています。馬田隆明氏(東京大スタートアップ推進部ディレクター)は、発達段階に応じた体系的なプログラムが重要とおっしゃっています。起業家教育については、志す人が少ないことも踏まえ、たとえ起業しなくても課題に向き合う姿勢が大切であることを探究学習の中で考えていきたいと思います。