校長ブログ

新コース立ち上げ特集㊷-発話プロトコル分析

2023.01.28 グローバル教育
1月28

 発話プロトコル分析とは、さまざまな作業、実験、調査などの中での状況や感想を学習者に発話してもらい、その内容を記録したデータを基に、思考過程を分析するものです。認知科学の領域ですが、アプローチの方法は質的なもの、量的なもの、多種多様です。教育の分野でも授業における生徒の発話等を記録し、観察・分析に役立てられています。英語教育では、未知語の類推、空所補充、要約作成などの研究に寄与しています。

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 科学技術の進展に伴い、AIは人間と同じような思考ができるコンピュータ・プログラムを作成することできるようになりました。結果、発話思考法を積極的に活用し、コンピュータと人間の思考が比較可能となったのです。同時に、発話思考法を含んだプロトコル分析が発展したというわけです。

 発話思考のメカニズムにおいて、認知システムの中で情報が流れると、情報貯蔵(感覚入力バッファ)⇒短期記憶(ワーキングメモリ)⇒長期記憶に進むと考えられています。通常、新情報は短期記憶にあり、これをリアルタイムで発話したものが発話プロトコルデータとなります。その意味で、既に長期記憶にある旧情報から再構成したものとは区別されます。

 授業記録は学習者が自らを振り返り、改善点を明確にするもの。一歩進めて、録画によって教師と生徒の発言を再現して記録するT-C型授業記録、生徒個々の授業経験に迫るエスノグラフ、タスク実行中の眼球運動を記録することで得られる視線計測データ等があり、それらが気づき awareness)を喚起してきたこともまた事実です。

 発話プロトコルには、内省的 (concurrent or on-line) なもの、回顧的 (on-line or off-line) なもの、メタ言語的なもの、非メタ言語的なものがあります。内省的なものは生徒がタスクに従事している時、オンラインでデータが収集されます。一方、回顧的なものはタスクの合間にある小休止の間にデータが収集されるか、タスクが完全に終了した後でデータが収集されます。学習過程を反映した情報を収集するためには、内省的で、非メタ言語的な手法が望ましいと考えられています。

 発話プロトコル法は、人間の頭の中で起こっている現象を説明し、人間内部のメカニズムを解明することができるだけでなく、課題を見つけ出すことも可能であるとされています。大別すると、実験・観察において、生徒に実験的操作がなされ、その時生じた感情・心的イメージを言語報告する内観分析と複数の生徒のコミュニケーション場面を設定し、発話された内容と声の調子や抑揚、沈黙時間などの非言語的データも記録する会話分析があります。認知過程の正しい反映など、克服すべき課題はあるものの、有効な対応策が講じられており、参考になる取り組みとなっています。