校長ブログ

海外の取り組みに学ぶ①ー北欧

2023.01.30 グローバル教育
1月30

 フィンランドは、国の経済が危機に直面したノキア・ショックから約10年が経過。人や技術を成長させ、起業を育み、福祉がミドルの転身を支える取り組みが功を奏し、活気を取り戻しています。人口の少ない北欧諸国には限られた人的資源を最大限に活用する文化があるのです。

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 ノキアは携帯電話事業の売却などに伴い、大規模な人員削減を迫られ、技術者の流出が進めば競争力を失いかねない状態でした。政府は企業を救うというよりはむしろ、人や技術を救う方向に舵を切りました。具体的には、ノキアには資金提供はせず、リスキリング(学び直し)による転職や起業支援に資金を充てたのです。ノキア自身も起業を希望する者に12万ユーロを提供し、10年以上の勤務者に賃金1年分を払うブリッジプログラムを設けました。

 北欧全体が起業を推し進めています。北欧5カ国のベンチャー投資額は2021年に160億ドルを超え、ユニコーン企業数は65社。ハイリスク・ハイリターンを求めるシリコンバレーとは対照的であり、福祉が起業や転職のリスクを軽減し、柔軟性(フレキシビリティー)と安全性(セキュリティー)を兼ね備える「フレキシキュリティー」が浸透しています。

 スウェーデンが1990年代、金融危機に直面し、大企業の優遇税制を廃止したように、北欧各国は企業間競争を推進し、経済の活性化に向けて環境を整え、国の成長力や危機からの回復力を高めてきました。1960年代、デンマークで普及したフレキシキュリティーは、欧州全体に広がりを見せました。失業率対策として、リスキリングや再就職活動に取り組まないと失業補償を減額する罰則を作ったことで失業率は低下しました。

 人口が約600万人弱のデンマークが限られた人口でも国際競争を勝ち抜くためには一人ひとりの生産性を高める必要があります。今、社会人の約3割が月単位で、実質無料のトレーニングを受けられるようになっているそうです。2019年とのGDP比は2.8%ですが、これは日本の9倍。人口減少に直面する日本が参考にすべき取り組みと言えます。