校長ブログ

褒め方、𠮟り方

2023.02.01 カリキュラム・マネジメント
2月1日

 国際教育学会会長の西村和雄氏(京都大学名誉教授、神戸大学特命教授)と副会長の八木 匡氏(同志社大学教授)は、「褒め方、叱り方が子どもの将来に与える影響-日本における実証研究」(経済産業研究所)の中で、保護者が子供に対して、声かけと応え方をどのようにしたらよいか、また、子供が問題行動をした時の注意の与え方、好ましい行動をとった時の励まし方について述べられています。

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 神戸大と同志社大のチームは、2021年、インターネット上で全国の2070歳未満の男女を対象にアンケートを実施、約1,300人の回答を分析されています。叱り方については、「次は頑張ろうね」「どうしてできないの」「罰を与えられた」の3つのグループに分け、進学・就職先の決め方における自立性、計画的に物事をやり通す力、コンプライアンスに関わることなどを4つの指標とし、回答を数値化、比較しています。

 結果、褒め方については、努力を評価する「頑張ったね」がトップであり、「偉いね」「褒美を与えた」の順。叱られ方については、「次は頑張ろうね」に続き、「どうしてできないの」「罰を課された」の順となっています。研究チームは、子供を叱る時、「次は頑張ろうね」と励ました方が原因追及や罰よりも成人してからの自立や実行力に効果的であるとされています。西村和雄教授は、叱り方のメリットやデメリットを意識することが重要であると言われています。

 これまで子育てに関する多くの研究の中で褒め方、叱り方については様々な分析がなされてきました。今回の調査では、日本の親が行うと思われる叱り方、褒め方を取り上げ、子どもの時の叱り方、褒め方と成人後の自己決定度、安心感、長期的な視点で物事を考える習慣、倫理的行動に与える影響を考究されています。さらに、「長期的な視点で物事を考える習慣は、行動経済学における双曲割引の度合いと関連があり、賞罰が、双曲割引の度合いを高め、遠い将来よりも直近の利得を強く意識するような影響を与えるとするなら、それは倫理的行動にも影響を与えているであろう」と示唆に富むコメントをされています。

 日常生活において、親は子供に対し、表情やボディランゲージなどの非言語コミュニケーションを除き、言葉を通じてコミュニケーションをとるのがふつうです。当然、それをどのようなにするかで子供の成長にも影響が出ることは自明です。特に、問題行動の際の対応の仕方は子育ての中で親が悩む点でもあります。それは教育現場でも同じ。「従来通り」の発想ではなく、新知見を吸収しながら教育効果を高めたいと思います。