校長ブログ

新コース立ち上げ特集㊺-気づき仮説

2023.02.11 グローバル教育
2月11日

 気づき仮説(Noticing hypothesis)とは、Richard W. Schmidtによって提唱(1990)されたもので、文字通り、学習者の「気づき」のことです。

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 気づき仮説には、インプット➡インテイク(intake)➡アウトプットという段階があります。インプットとは、学習者が聞いたり、読んだりすることであり、アウトプットとは話したり、書いたりして産出すること。言語を習得するにはインプットの質が重要と言われてきました。しかし、Schmidtは、それだけでは十分でなく、学習過程の中で、語彙・文法などに意識的に気づくことが不可欠とし、その「気づき」をインテイクと区別したのです。

 勿論、理解することと気づくことは違いますが、このような仮説が生まれた背景には、Schmidtのブラジルでの5カ月間の原体験があると言われています。現地で最初の5週間はクラスでポルトガル語を学び、それ以降はネイティブと話しながら学び、学習記録を蓄積し、分析したところ、よく耳にする動詞は使えるようにはなったものの、すべてが使いこなせるようにはならなかったそうです。つまり、使えるようになった動詞は意識的に気づいた動詞だったとのこと。それが「気づき仮説」につながっていくというわけです。

 第二言語習得で「気づき」の重要性が指摘されて久しく、「気づき」が 目標言語の習得や学習に大きな影響を与えることは言うまでもありません。Schmidtの功績は、意識(consciousness)の役割を検討し、学習を促進する効果があることを言語化したところ。「気づき」に影響を及ぼす要因として「期待」、よく見聞きするもの、目立っているものは気づきやすいという「頻度」、タスクの難易度などによって気づきやすさが変わるという「スキルレベル」を挙げています。また、意識レベルの低いものから順に、「知覚・認知」、「気づき」、「理解」というレベルに分け、このうち、「気づき」の対象を言語形式だけではなく、社会的特性や語用論などに発展させています。さらなる研究成果が期待されます。