校長ブログ

新コース立ち上げ特集㊼-リテリング

2023.02.25 グローバル教育
2月25

 リテリング(retelling)とは、英文を読んだ後、本文を見ずに、その内容を第三者に語ること。一般的には、本文読解後、テキストを閉じて行います。相手がまったく知らない内容をわかりやすく伝え、理解してもらうことがねらいですから、英文の情報を頭の中でいかに整理し、そして、いかに表現するかがポイントになります。

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 リテリングという手法は1920年代から取り入れられ、1990年代にはティーチング・メソッドの一つとしてその可能性が検討され始めました。日常生活に置き換えてみると、学校での出来事を家に帰ってから家族に話すのと同じ。最大のメリットは、思考→判断→表現することによって内容理解がより深められることなのです。

 英語学習で言えば、まとまりのある英文を読み、リテリングを行うとスピーキングにつながり、逆に、リテリングを聴くことがリスニングにつながるという相乗効果が期待できます。(聴く姿勢を養うことも重要)その意味で、リテリングがポスト・リーディング活動として有益であるのがわかるはずです。スキル・アップの秘訣は、情報処理能力とそれを土台にした表現力、そして、なによりも伝えたいという意欲の醸成です。

 かつての英問英答では、When and where did the story happen?(いつ、どこでそのストーリーが起こったのですか)のような切り出しをすることが多かったのですが、これでは単なる暗記や断片的な発話しか引き出せなくなる可能性があります。自分の言葉で伝えようといくら言っても、表現力が乏しければリテリングは成立しないのです。

 そこで、初期指導では、オーラルで補足しつつ、教師自らがモデルを示し、理解や記憶の確認を促すことが肝要。つまり、発話しやすくなるような環境を作ることで再生(recall)と再認(recognition)に結びつけるというわけです。

 産出活動という点で見れば、音読は本文のみを対象としているため制限的、ディベートやディスカッションは各自の意見を表明できるため自由度が高くなります。それらと比べると、リテリングは読解に依存しつつ、話し手が本文を再構成するので、その中間に位置すると言えます。

 リテリングの"強み"は、本文の情報を伝えるだけでなく、話し手の背景知識を統合して状況全体が表現されること。相手の理解度を高める手段としては、1枚の絵を使ったpicture description、図や表にまとめる情報転移(information transfer)などがあり、アプローチは様々。大切なのは、話し手が頭の中で情報をまとめ、伝えたいことを言語化し、自身の理解をより深められることなのです。