校長ブログ

新コース立上げ特集㊾-小学校の英語教育

2023.03.11 グローバル教育
3月11日

 今回は現在、大学院で学び、将来は小学校教員をめざしているAさんとの対話からです。

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A:小学校の頃、英語は課外活動でちょっと勉強しただけでしたけど、今や教科化され3年目。いつ頃からこのような流れになったのですか?

校長:2008年に学習指導要領が改訂され、56年生に外国語活動が新設されたのが契機。背景には、「総合的な学習の時間」で外国語などの学習ができるようになったことがあるね。

A:かなり前からだったんですね。

校長:実際、大半の小学校で英語活動を実施していたものの、授業時間や内容に温度差があったため、文科省は機会均等を確保し、中学校との接続を図るために必修化に踏み切ったというわけ。結果、2020年、外国語活動は34年生に引き下げられ、56年で英語は国語や算数などと並ぶ必須教科となったんだね。

A34年は「聞くこと」「話すこと」という音声中心で「話す」には「やり取り」と「発表」の2領域があり、56年で「読むこと」「書くこと」が加わっています。日本語でも音声から入り、文字に進んでいくのですから、小学校で音声中心のコミュニケーション活動をすることは自然だと思いました。海外でも同じなのでしょうか?

校長:そうだね。音の最小単位である音素の認識から始め、文字と音の関係を理解させる指導へ進めているよ。見て覚えるだけではつまずいてしまうからね。よく、単語が覚えられないと言うけど、読めなければ覚えられないし、書くには音素に分解して、文字に対応させなければならないからね。つまり、アルファベットの音と文字の関係に習熟することがポイント。音声に続いて繰り返し単語を発音するだけでは不十分だし、「読む」という技能につなげていくには、聞いたり、話したりしているだけではスキルアップできないということかな。

A:よくわかります。小学校の場合、アルファベットの音と文字を対応させて読んだり、書いたりする指導に慣れていない先生が多いんじゃないですか?

校長:その通りだね。だから教える側が音素を正確に発音し、文字を対応させる指導ができるような研修が必要になるんだね。小学校で英語が教科化される際、市町村の教員が研修を受け、その教員が伝達講習を行ったのは記憶に新しいところじゃない?

A:それだけでうまくいくのでしょうか?

校長:よい着眼点だよ。文科省の令和3年度英語教育実施状況調査によれば、学級担任が外国語活動を指導しているのは中学年で68.5%、高学年で50.8%であり、専科教員はそれぞれ21.5%、29.5%。今後、専科教員の割合は自治体によって異なるだろうけど、外国語教育が小学校教育に基づいて行われる以上、改善されていくだろうね。

A:英語に堪能な外部人材を活用するのもひとつの方法だと思いますが、教員の力量向上が優先されるべきではないでしょうか?子供たちはどう考えているんでしょう?

校長:2012年の文科省の調査では、小学校で英語を勉強した中1の約8割が単語や文を読んだり、書いたりすることをもっとしておきたかったと答えているよ。日本人は何年英語を学んでも英語が身につかないと揶揄されて久しいけど、小学校で英語を教科化したこと自体がエポックメーキングなのだから、「令和の日本型学校教育」を担う教員の養成、採用、研修等を行い、小中連携のポイントである到達目標(Can-Do)の共有、テストと評価のあり方、学習者自律に向けた制度設計に期待したいものだね。

A:私も小学校の教員になったら研修を受けて英語も教えられるよう頑張っていきます。