校長ブログ

学歴ではなくスキル

2023.05.27 EdTech教育
5月27

 学歴以上にスキルを重視した採用を行う企業が増えています。IT産業ではこの傾向が顕著とか。あるインターネット大手では、1割強が専門学校卒。今や世界のどこでもDX化が進み、企業のニーズも目まぐるしく変化しています。多様なキャリアをもつ人々を受け入れることは、人手不足を解消する有効な手段になり得るのです。

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 スキル重視を提唱したのが米国のIBMDX化の中、ITエンジニアなどについてはスキル基準の採用を打ち出しています。世界経済フォーラムは、国際標準づくりの必要性を提言しており、その手段として注目されているのがeラーニングの電子証明書となるデジタルバッジ。米国ではeラーニングで高度なスキルを習得した人材は約7千万人。フランスやシンガポールでは政府が求職者のeラーニングの受講履歴を認証したり、独自の証明書を発行したりして転職を支援しているそうです。

 DX化に伴い、IT関連などの分野では人財獲得が激化しています。コーン・フェリー(米)は、2030年までに世界で約8,500万人の人材が不足し、金額にすると約8.5兆ドルの成長機会が失われると予測しています。デジタル後進国と言われ、少子高齢化が進む日本でも同じ状況にあります。学位よりスキル重視の風潮が広がる中、大学教育と企業ニーズに隔たりがあるのもまた事実。経産省(2017)によると、業務に必要な専門知識を大学で学んだと答えた人の割合は情報系で33%であり、デジタル分野の指導教員が不足しているようです。

 海外では、学歴を問わない採用が広がっている模様。米国のテック企業では、IT職で大卒以上の学歴が必要な求人の割合が5年間で2割程度低下し、フランスでは、学歴不問、開発職に採用する企業の割合が15%以上伸びているという調査もあるくらいです。ちなみに、米国では2020年、連邦政府の職員の採用について、スキルを基準とするよう求める大統領令が出されています。大学の学費が高騰し、経済的事情で進学できない人が増えているだけでなく、人種的マイノリティーでその傾向が強くなり、スキル重視が教育格差を是正し、より多様な人にキャリアの機会を開く側面もあるのです。

 現在、日本の大学進学率は5〜6割ですから、学歴だけ見て人物評価している限り、全体を見たことにはなりません。産業構造が変容するのに伴い、人物評価の尺度も時代の要請に合わせたものにしなければなりません。働き手のリスキリング(学び直し)に力を入れる傾向はあるものの、学歴偏重からの転換を促すような視点はまだまだ。スキルを評価・認証する制度インフラ整備が急務なのです。