校長ブログ

温暖化対策の工夫

2023.05.02 トレンド情報
5月2日

「花咲かじいさん」ではありませんが、近年、開花の時期を操る物質の開発が進められているそうです。

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 例えば、秋を代表する菊の花。秋に開花するのは、日照時間の長さから季節の変化を感じ取っているからですが、中道範人氏(名古屋大学教授)らの研究では、地球の温暖化対策の一つとして、化合物をかけて植物の体内時計のリズムを調節し、開花の時期を操れる試みが進められています。

 気温が上がり、夏の暑さが異常になる地域では、米などの農作物が枯れてしまうリスクが高まります。開花時期を操作できれば、暑くなる前に収穫することが可能になります。また、年に1度しか花を咲かせない農作物でも繰り返し実らせれば、収穫量を大幅に増やすことが期待できます。すでに、これらの研究成果によって、北海道では気温が下がる前に稲を栽培・収穫できるようになり、早咲きの品種改良につながっています。

 植物は季節の訪れを知る体内時計をもち、特定の化合物は体内時計の部品となる分子に働きかけ、針を早く進めたり遅くしたりする特性があります。研究の方向性として、人間や昆虫の体内時計にも影響する危険性があるため、現在、植物だけに作用する化合物を探すようにしているそうです。

 辻寛之氏(名古屋大学教授)らは、植物のタンパク質であるフロリゲンの働きを調節し、花のもとになる花芽を作り、働きを抑える化合物を見つけ、浮草で開花を抑える効果を確かめる開花を操る研究を進めています。

 桜は9.5万種類の遺伝子のうち3種類の働きを解析すれば、高精度の予測につながることがすでにDNA研究所らによって解明されています。島津ビジネスシステムズのAI分析によると、このままでは2100年には一部の地域でサクラの咲き誇る姿が見られなくなるとのこと。地球の温暖化によって、花芽が低温にさらされると開花時期が遅れ、休眠から覚めなくなってしまいます。北日本を中心に開花が早まるものの、九州の南部で咲かなくなってしまうことが心配の種であることは疑う余地がありません。

 温暖化が進行すると気候が変わり、当然のことながら植物への影響も懸念されます。しかし、開花を操る物質が誕生すれば、気候が変動しても安定して花を咲かせられます。開花は食料確保に直結するだけに、それがなければ各地の名産品がなくなり、全国の食文化が失われかねません。科学のさらなる進歩を期待したいものです。