校長ブログ

AIとの共存

2023.06.02 EdTech教育
6月2日

 AI活用のフェーズが変容し、高度な対話能力をもつチャットGPTが登場しました。これまでのAI活用は機械翻訳のようにことばを学ぶツールでしたが、自然な文章で様々な質問に答えるチャットGPTが普及すれば、言語学習の根幹を揺るがすことになりかねません。

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 ニューヨーク市は学校での使用を禁止、シンガポールは受け入れ方法を指導するなど、国によって対応が異なります。日本の大学も対応は様々。東大はAIだけを使った論文は認めないこととし、活用に関する議論を始めています。東京外大は、AIの活用指針を公表し、授業での活用ルールを教員と学生で共有しています。上智大は、教員が許可した場合を除き、リポートや論文を書く際に使うことを禁止しています。(神戸市は、生成AIの利用方針を条例化することを明らかにしています)

 G7は生成AIのリスク評価に関する国際基準づくりを進めています。高性能なAIの利活用を進めながらAIの監督やプライバシー保護のためのデータ加工、サイバー攻撃への防御体制なども含め、法の支配、適正な手続き、イノベーションの機会の活用、民主主義、人権尊重という5つの原則を設けるそうです。

 時代の潮流を鑑みれば、今や幼少期からAIが身近な存在になりました。学習指導要領にあるように、これまでの暗記と再生による知識偏重主義ではなく、正解がひとつの問題はAIに任せ、リアルな社会問題に対する最適解・納得解を探究する「主体的・対話的で深い学び」に直結させることが大命題です。

 ただし、AIから画期的なアイデアを引き出し、新たな価値を生み出すためには、AIを使いこなすスキルを高め続ける努力も忘れてはなりません。海外では、チャットGPTを高度な作業に利用する「プロンプトエンジニアリング」という技能をマスターする動きが拡大し、日本でもその体制づくりが進んでいます。

 参考になるのがAIによる研究が進む囲碁。1311カ月、史上最年少でタイトルを獲得した仲邑菫女流棋聖はAIが示す手だけでなく、自身が棋風に合った手を打つのがベストと語り、国内第一人者の井山裕太王座はAIを自分なりにどのように落とし込むかが重要と述べられています。AIの進化に伴い、人間が学ぶべきことは何かを見出して初めて、人創りの未来が開けると言うことです。