校長ブログ

教育費格差

2023.07.21 トレンド情報
7月21日

 首都圏は私立中学受験が盛り上がり、関西圏においても14年ぶりに復調の兆しを見せています。そのような中で所得階層による教育費の差が問題視されています。

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 世帯年収が平均1,200万円以上の家庭の支出が増加し、昨年は初の全平均の2倍超。中低所得層の教育費の負担が増えれば、家計を圧迫することは明白であり、それが少子化につながりかねないと懸念されています。

 家計調査年報(2022)では、所得階層を5グループに分けていますが、特に差が目立つのは塾・予備校にあたる補習教育。田中宏樹氏(同志社大学教授)は、高所得者層の支出増加の勢いが強く、ゆとり教育が始まった2002年以降、公教育に不安を覚える親が増えていることを指摘されています。

 海外でも同様の傾向があり、内閣府が5カ国を対象に実施した国際意識調査(2010)では、子育てにかかる経済的負担として、韓国では7割超が学習塾など学校以外の教育費と回答しています。

「出生動向基本調査」(国立社会保障・人口問題研究所)では、子どもをもたない理由の1位が子育てや教育にお金がかかりすぎることであり、教育費の負担が重くなれば、学力差が拡大するだけでなく、少子化への影響も危惧されています。日本ではすでに住民税非課税世帯を対象に、大学などの高等教育が無償化され、結果、該当世帯の進学率が約10ポイント上昇したそうです。

 東京都のように、私立中学の授業料を10万円補助するといったような公的資金の投入があれば、少子化で生徒募集が厳しくなる私学や学習塾にとっては追い風になります。海外では、高い出生率で知られるスウェーデンは大学教育が無償であり、生活費に充てる給付型の奨学金制度もあります。それにもまして、学歴以上にどのような職に就くかを考えて大学に進学する風土があり、大学教育が職業に直結しやすいカリキュラムになっているそうです。

[参考]少子化対策として、自治体が「子ども予算」の拡充を進めています。関連施策としては、保育所や学校給食の支援などの施策が目立ちます。国はすでに幼児教育・保育の無償化を開始、認可保育所の場合、3歳以上は全世帯、3歳未満は住民税の非課税世帯が対象としています。