校長ブログ

クリティカル・シンキング

2023.08.16 トレンド情報
8月16

「メディアリテラシー教育の中核原理」(全米メディアリテラシー教育協会、2007)には、特定の目的のために作り出される種々のメッセージに対し、批判的思考力が必要であると述べられています。

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 メディアリテラシーは、社会の様々な情報に向き合うための読み書き能力のこと。中核原理はフェイクニュース(校長ブログ2023.7.10)をはじめ、ネット社会の問題を予見する内容であり、ユネスコ(国連教育科学文化機関)は教育の基本原則に取り入れています。米欧では、メディアリテラシーにはクリティカル・シンキング、つまり、批判的思考こそが不可欠と説かれていますが、日本の学習指導要領には明確な規定がありません。

 生成AIが進展する中、大学では文書の校正や知識の整理に使うことは認めるものの、出力をそのままリポートにすることを禁じています。しかし、語学分野では人と機械の翻訳を比較してよいところを学ぶなど、積極的な活用が見られます。一方、小中高では誤った情報をそのまま受け取ったり、作文を丸写しにするのではないかという懸念があり、使い方に制約があるのもまた事実。

 生成AIが人間にとってベストフレンドになれるのかどうかの前提となるのがどのようなミッションで作られているかということ。チャットGPTの開発を進めるオープンAIは「汎用人工知能(AGI)が人類の利益になることの保証」と定めています。また、研究する技術が「概して人間よりも賢い」とも明記されています。いずれにせよ、利用者がテック基盤を信頼すれば、交流サイト、動画・写真サイト、学歴や職歴といったデータも増え続けることになります。従って、優れた技術を有し、社会的な影響力が大きい企業こそ、そのミッションと真摯に向き合い、AIが人類すべての利益になるよう尽力しなければならないのです。

 テクノロジー全般を見渡しても大量生産・消費社会が地球の環境を悪化させ、生殖医療が人間の尊厳を脅かしていることは疑いありません。AIリテラシーひとつとっても人種・ジェンダー差別、プライバシーの侵害、著作権保護、社会的格差(デバイド)の拡大など、様々な問題があります。大切なのは科学が発達し、情報化が進めば進むほど、物事をクリティカルな視点から鳥瞰する姿勢が求められるのは自明なのです。