校長ブログ

デジタル履修証

2023.10.19 大学進学研究
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 身につけた知識やスキルを電子的に証明するデジタルバッジ(履修証)か注目されています。人生100年時代、DX化が進む昨今、AIやデータサイエンスといった持続可能な様々な知識やスキルを生涯を通じて身につけ、学習歴を積み上げることが求められています。

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 一般財団法人オープンバッジ・ネットワークはその導入を推進しています。ポイントはどこで学んだかではなく、何を学んだか、できるようになったかということ。例をあげると、国際標準のオープンバッジを長崎大学が導入したのをはじめ、日本の大学ではすでに80校以上が採用しています。また、ITや経営学などのプログラムを提供し、修了者にデジタル履修証を発行し、単位として認める大学も増えています。

 こうした動きはマイクロクレデンシャル(小さな資格)と呼ばれ、学部や大学院で取得する単位と併せて、コースや単元ごとに履修証を発行し、その積み重ねによって知識やスキルを認定しようというものです。

 企業がリスキリング(学び直し)講座の修了者に証明書を発行する例も増えています。大学卒業後に取得した資格を含め、生涯を通じた学習履歴が可視化され、学びの動機づけになる効果も期待されています。米欧ではその普及はかなりのもの。今や、グーグルなどテック企業は大卒を採用要件にしていません。

 米国では100万を超えるクレデンシャルが発行され、その管理や活用を担うプラットフォームが教育産業の一角を担う時代になっています。一方、日本では、バッジをSNSで公開する受講者が増えているものの、学校や企業で活用する例はまだほとんど見られません。

 米国では連邦政府が全学生成功法を定め、マイクロクレデンシャルの普及を支援していますが、日本で広がる可能性があるとすれば、内容と授与条件など、質保証する仕組みづくりに加えて、行政のバックアップがあってこそ。その意味でこれまでのように、学んだ時間に応じて単位がもらえる制度設計に加え、知識やスキルを使いこなす能力を可視化し、評価される仕組みづくりが必要となります。

 卒業した学校がその後に影響する学歴信仰が強い日本社会でそれがなくなるかどうかはわかりませんが、デジタルバッジが理工系人材の育成に一石を投じることは間違いありません。大学も知名度だけに頼っていられなくなった今、教育内容の見直しと質向上がイノベーションにつながることは疑う余地がないことなのです。