校長ブログ

産学連携

2024.01.02 大学進学研究
1月2日

「関西経済人・エコノミスト会議」(日経新聞、日経研究センター)では、新しい技術やスタートアップとの産学連携のあり方についてなど、ハイレベルな議論が展開されました。スタートアップとの産学連携で言えば、その利点は意思決定のスピードとPDCAサイクルを速く回せること。ものづくりに適しています。例えば、CO2削減につながる紙パックに入れた飲料水の販売などがその典型であり、消費者個人の日常の行動を変えるビジネスモデルとなっています。大学では、未知の分野に長期的に取り組めるものの、自治体がどのような街づくりをしていくかおさえ、ニーズに合う開発を提案しなければ連携は成立しません。

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 大学発ベンチャーが生まれ、分野によっては、世界中から出資が集まる可能性がある一方、国内の投資市場が小さくなることを考えると、スタートアップが米国やシンガポールなどの大きい市場に展開していくことが不可欠です。

 脱炭素に貢献する人材については、ネイチャー誌が日本の研究力が世界トップレベルでないことを指摘しています。米国、中国、シンガポールなどが日本の優秀な人材を獲得しようとしている現状を踏まえると、現地に拠点を作り、世界の研究者と互いに高め合うのと同時に、高校と連携して起業家教育に取り組む必要があります。

 大学と行政、産業界などが加盟する起業支援組織「京阪神スタートアップアカデミア・コアリション」は、脱炭素に関し、技術をレベルアップするだけでなく、イノベーションを起こす逸材への期待を高めています。ポイントはスタートアップの創出プログラムの構築。実際、高度な技術をもっていても資金やマーケティングの点で課題を抱えている場合もあります。大切なのは、その分野の専門家と組んではじめて社会実装できるわけです。

 温暖化ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けて、CO2を排出せず、貯蔵や電気への変換が可能な水素を活用していくことが求められています。川崎重工業は世界初の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」を竣工しています。

 大学も努力されています。京都大学は、脱炭素技術でベンチャーを設立し、基礎研究から生まれる技術革新のシーズを社会につなぎ、若手育成に向けては、奨学金制度や女性エグゼクティブ・リーダー育成プログラムなどを進めています。産学連携では、キャッチアップ(課題解決型)と未来の課題を予測して対応するバックキャスト(未来思考型)とし、前者は三菱商事からの寄付で起業支援プログラムなど、後者は社会課題に取り組む「日立京大ラボ」などを推進しています。さらに、カーボンニュートラルへの取り組みとして、日本総合研究所などと「カーボンサイクルイノベーションコンソーシアム」を設立しています。

 大阪大学は、「グリーンイノベーション共創拠点」を設立し、地球温暖化や資源枯渇などの解決に向けた研究開発を行なっています。また、京都大学や神戸大学と連携し、「バイオものづくり」の研究も進めています。世界で初めてバイオガスから液体燃料を製造する技術の実用化に成功しています。高校を対象としたプログラムでは、最先端の研究をSDGs(持続可能な開発目標)の視点から紹介し、これまで2000人以上の高校生が参加したそうです。

 神戸大学は、省エネ推進に加え、エネルギー環境に対する理解を深めることをめざし、「カーボンニュートラル推進本部」を設立。学内の電力使用量を見える化し、エネルギー消費動向を分析しています。「水素・未来エネルギー技術研究センター」も新設し、国内で唯一の液体水素専用の実験棟を持ち、兵庫県や神戸市、川崎重工業や岩谷産業などと産官学連携のコンソーシアムも立ち上げています。