校長ブログ

国際共修

2024.01.05 大学進学研究
1月5日

 東北大学には、留学生を含む2000人近くが協働しながら学ぶ「国際共修」という科目があるそうです。6割以上が研究職やグローバル企業への就職をめざす理工系の学生だとか...。

DSC05121.JPG

 国際共修とは、文化背景の異なる人たちが、グループワークやプロジェクトを通して経験や情報を共有し、探究的に学ぶ科目。協働を通じて、他者を理解し、多様性を受け入れ、新しい価値観を創造する体験学習となっています。同大学の年間約60の学部科目と約10の大学院科目という数は国立大学では最多です。国際共修を軸とした教育のグローバル化は10年以上とのこと。

 授業内容は、地域社会や産業界と連携し、震災復興、地元企業の国際化、AIなど、多様なテーマを扱っています。学際的な科目との親和性も高く、海外では理系専門科目で行うこともあるようです。

 興味深いのは、吉本興業と連携し、お笑いを題材にした取り組み。授業では、漫才やコントの歴史など、お笑い全般について学び、自国のお笑いを持ち寄り比較するそうです。そして、内外の学生がチームを組み、英語でネタをつくり、学期末にお笑いライブでパフォーマンスを披露するというものです。

 担当の末松和子教授によれば、外国人から見た日本人の行動特性や日本の様式を知らずに失敗を繰り返す外国人の言動を笑いにしたネタが多いものの、日本人だけでは思いつかないような奇抜なものもあるそうです。また、吉本興業の芸人など、第三者評価を受けネタを洗練させていくというからかなりのレベル。アジアの学生は人前で自己表現する機会に少ないため、苦労するそうですが、それを欧米の学生が演技指導し、助け合いが生まれるというから効果は絶大です。

 互いの長所に目を向け、補完し合い、協働に取り組む姿勢は探究そのもの。文化的背景の異なる者同士が共通の課題を分析し、そこから得た学びを発表することはまさに、学習指導要領で標榜する「思考ー判断ー表現」にあたります。

 探究指導と同じように、個別最適な学びから協働的な学びに向かうための授業デザインや教員のファシリテーターとしての役割が求められることは言うまでもありません。しかし、国際共修のノウハウが高大連携のみならず、グローバル社会へのレディネスを高める意味で重要であることは紛れもない事実なのです。