校長ブログ

CBT

2024.02.01 大学進学研究
2月1日

 大学入試は、現高2が受験する2025年度入試から新学習指導要領に対応します。つまり、出題内容が変わるのです。新しく加わる「情報I」を機に、パソコンを利用した試験(CBT)を導入する大学が出てきます。

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 例えば、電通大。情報理工学域1類の総合型選抜と学校推薦型選抜における情報と数学の基礎学力を測る試験(120分)でCBTを活用します。一般選抜では、情報は選択であり、こちらは紙の試験。体験会に参加した生徒は、紙の方が難しく、学習内容の再現というより端末の操作能力が求められていると感じたそうです。

 本番さながらの模試では、11台のパソコン画面に後ろや横の席から見えなくするためのフィルターなどが取り付けられ、テストが実施されました。表計算をクロス集計させる問題もあり、操作には少し時間がかかったようです。電通大は、紙の試験で到達度を見る問題を大問で少数出す一方、CBTは易しい問題から難問までを全て単問で出題するとのこと。

 CBTはパソコン上で実施される試験のことですが、様々な利点と課題があります。利点の一つは出題の幅が広がること。動画や音声を使った問題やプログラムの作成・修正する課題も出題することもできます。また、問題の輸送や配布がなく、採点や問題訂正も容易になり、正誤だけでなく、問題を解く過程の情報も得られます。

 学校推薦型選抜などでCBTを導入する佐賀大は、このメリットを活かし、3種類あるテストのうち、思考力や判断力を問うもので実験や科学的な現象を動画で示し、観察に基づく思考力を測ります。基礎学力を問うテストは午前中に行い、午後の面接で参考資料として利用するそうです。

 IRT(項目反応理論)と組み合わせると、異なる試験問題でも解答した受験生の学力を比較できます。このため、試験の複数日程や複数回受験が可能になっても同じ結果が返ってくることが強みとなります。

 課題もあります。機器のトラブルやサイバー攻撃の危険性に加え、公正な実施に向けて、会場や端末などの環境などを整えなければならず、コストがかかります。試験後に問題を公開できないという特性もあります。IRTの活用には「問題バンク」を構築し、定期的に一部を入れ替えていく保守管理も必要です。

 公平性と実施の安定性が求められてきた大学入試において、CBTは、場所・機材の確保など課題克服が困難とされ、大学入学共通テストでの導入については見送られました。加えて、英語民間試験の活用、記述式問題の導入が頓挫したのも記憶に新しいところです。

 2022年度の入試では、総合型や推薦による入学者の割合が半数を超え、一般入試は少数派になりました。導入に伴う負担の軽減も課題です。その場合、試験問題やシステム、マニュアルなどを大学間で共有し、少ない費用と労力で利点を享受できるようになれば導入拡大が考えられます。いずれにしても、CBTは着実に広がっています。全国学力・学習状況調査は2025年度から中学理科がCBTに移行します。今、デジタルネイティブ世代の学力を測る最適な手段が求められているのです。