校長ブログ
全国学力テストとCBT導入
2025.04.23
教科研究
4月23日
全国の小中学校で毎年恒例の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が実施されました。例年と大きく異なる点は、CBT(Computer Based Testing)の導入です。
対象者は小6と中3、約200万人。教科は国語と算数・数学、そして3年に1度実施される理科。中学の理科では初めてCBT方式での実施が行われ、デジタル技術を活かした新たな評価の形が試みられました。(2026年度は英語に導入。27年度には紙の問題を全て廃止されます)
CBTの最大の特徴は、紙によるテストとは異なり、問題に動画や動的な図を組み込むことができること。文科省が公開したサンプル問題では、実験器具の使い方を動画で確認した上で選択する問題や、電気回路を図上で組み立てるといった、より実践的・体験的な内容が見られました。
生徒は1人1台の端末を使い、選択肢をクリックしたり、キーボードで記述を行ったりして回答します。これにより、従来の選択式や記述式の問題に加え、視覚・操作的な理解を問う問題も可能になりました。まさに、「思考力・判断力・表現力」を総合的に測る試験と言えるものです。
CBTではIRT(項目反応理論)という方式も活用可となりました。これは、受験者の解答状況に応じて問題の難易度を変える仕組みで、より個別の学力を精緻に把握できるメリットがあります。例えば、どの難易度の問題にどれだけ安定して正答できたかを分析することで、単なる点数以上にその子の理解度を多角的に評価できるわけです。
運用面での利点もあります。問題の多くが非公開であるため、同じ問題を数年にわたって繰り返し使用することができ、学力の経年変化を正確に捉えられることです。(中学理科のサンプル問題では、動画を見た上で実験器具の適切な使用方法を選んだり、図を移動して電気回路を完成させたりする問題がありました)また、不登校や体調不良の生徒にも、インターネット環境があれば自宅などから受験できる柔軟さもあります。さらに、回答用紙の回収・採点の手間も省けるため、学校現場の業務負担の軽減につながります。
一方、課題もあります。最大のものは通信環境の差。文科省によれば、全国の公立小中高のうち、CBTに必要とされる通信速度の推奨値を満たしているのは、わずか2割とのこと。中学理科のCBTテストは学校への負担を軽減するため、4日間に分散して実施されました。こうした工夫は、今後の全国規模のデジタル試験実施のあり方を考える上で、非常に重要です。
CBTはすでに国際的なスタンダードになりつつあります。例えば、フランスの学力調査やOECDのPISA調査では、CBTが活用されています。大学入試センターも、2025年1月の共通テストでCBT導入を検討しましたが、2021年に断念を発表しました。場所や機材の確保、通信トラブルへの対応など、クリアすべき課題が多いとの判断でした。しかし、各大学で調査・研究が進み、佐賀大学は2018年度の推薦入試で、全国で初めてタブレット端末を用いた入試を導入しています。司法試験は2026年から移行予定であり、日本語教師の国家資格試験でも導入が検討されています。
このような全国規模の試験が進化していく背景には、生徒個々の学びを大切にし、可能性を引き出すという方向性があります。本校でも、日頃の授業において、ICTを活用した探究的な学びや、思考力を育む活動に力を入れています。今回の結果は、7月以降に公表される予定ですが、一喜一憂するのではなく、生徒たちが学びの歩みを見つめ直し、今後の教育にどう活かしていくかを考えるよい機会にしていたいと考えています。