校長ブログ
大学教育の質保証
2025.05.31
大学進学研究
5月31日
大学での学びが学習者中心と言われるようになり、教員が教科書の解説をするだけでなく、学生同士のディスカッションやプレゼンテーションを組み込んだアクティブ・ラーニングといわれる授業形態がありふれた光景となってきました。授業評価も学生の声を積極的に取り入れ、学習者中心で学ぶスタイルが浸透してきています。
しかし、教育そのものの質保証は教員中心であり、学生はまだまだ受け手となっている感は否めません。北欧では、理事会や教授会にそれぞれ学生が正式メンバーとして参加しているそうです。さらに、日本の認証評価に相当するアクレディテーション活動でも、大学教育の質保証の一端を担っているとか。
英国の大学評価でも大学が作成する自己点検・評価報告書に加え、学生が出す意見書も加えられています。モンゴルや台湾でも同様であり、大学の意思決定を行う組織に学生代表が含まれています。
その意味で、日本の教育質保証、大学運営、認証評価における学生の参加には温度差があります。これまでも学生が大学運営に関わるという発想はなく、北欧や英国などとは大きく違っています。とはいっても、日本の教育質保証や大学運営が世界基準で見ても劣っているわけではなく、単純にその是非を論ずることはできません。
「質保証における学生参画のあり方に関する調査研究」(大学基準協会、2023〜24)によると、「授業評価アンケートを実施する」が94%、「学生の学習実態調査を実施する」が63%、「大学教育全般について学生の意見を聴く」が52%となっています。
少数派ではあるものの、「学生が大学や法人の委員会等に参加する」は14%、「学位プログラムの評価を学生と教職員が協働で行う」「学生発案型授業を実施する」は共に5%となっており、インタビュー調査では、学生が直接的に参加することが教育質保証と学生自身の成長につながっている事例があるとのこと。
調査研究部会長である堀井祐介氏(大阪大学教授)は、日本の高等教育は欧米の事例を取り込み発展してきたものの、社会的文化的影響を受けるため、欧米のものをそのまま持ち込むことは難しいと述べられています。
学生が単なる学習者でなく、質保証の当事者であるという点を考えれば、教育の質向上についても、学生の声に耳を傾け、成功事例を活用していくことが求められるのは当然です。学生が本当に、大学コミュニティーの寄与できるかという指摘もあります。しかし、高校までの主権者教育を鑑みれば、国際通用性のある認証評価の仕組みを構築する際、再考しなければならないのではないでしょうか?