校長ブログ

温暖化の影響

2025.05.07 教科研究

5月7日

 春といえば、満開の桜を思い浮かべる人が多いでしょう。入学式や卒業式、花見など、私たちの生活の中で桜は特別な存在です。しかし、近年、その桜に異変が起こっています。開花時期が大きく変動し、例年通りに咲かないことが増えてきました。その背景には、地球温暖化による気候の変化があり、2050年ごろには九州の一部地域で桜が開花しない可能性があると専門家は指摘しています。

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 例えば、今年の大分県津久見市の「豊後水道河津桜まつり」では、開花が3週間遅れ、予定より1週間延長されました。関係者は不安を抱えながら準備を進めたそうです。静岡県河津町でも同様に開花が2週間遅れ、桜まつりの期間が9日間延長されました。しかし、来場者数は目標の80万人に届かず、観光業にも影響を及ぼしました。

 桜の開花が遅れる理由の一つは、「休眠打破」の遅れです。桜の木は、一定期間の寒さを経験しないと目覚めることができません。近年、冬が暖かくなる傾向が続き、この休眠打破がうまく進まないことが指摘されています。九州大学の研究によると、2031~2050年には鹿児島や高知などで満開にならない年が増え、2081~2100年には、南九州の一部では桜が開花しなくなる可能性があるそうです。

 また、「桜前線」の動きも変わると予測されています。これまで桜は九州から北海道へと徐々に北上していましたが、温暖化が進むと、九州から関東にかけて一斉に開花するようになります。東北では今より2~3週間早く咲く一方で、南九州では1~2週間遅れる可能性があると言われています。

 桜は私たちにとって美しい花であると同時に、経済的な影響も大きい存在です。関西大学の試算では、2025年の花見の経済効果は約1兆4000億円とされ、訪日外国人の消費も過去最高になると見込まれています。しかし、桜の開花が不安定になれば、観光業にとって大きな打撃となるでしょう。実際に、JTBは花見ツアーのキャンセルポリシーを柔軟にし、開花状況を見て旅行者が判断できるようにしています。また、花見の名所を複数巡るツアーや、桜以外の花を観賞するプランを増やすなどの工夫もされています。

 一方で、桜を守るための動きも始まっています。例えば、日本花の会は温暖化に強い「ジンダイアケボノ」という品種を広めようとしています。しかし、まだ十分な流通網が整っておらず、普及には時間がかかるようです。また、千代田区では桜の保存のためにクラウドファンディングを実施し、福岡市でも新たな保全策が検討されています。

 さらに、森林総合研究所の研究によると、2050年ごろには鹿児島ではソメイヨシノが正常に咲く年がほぼなくなる可能性があるとのことです。これは、温暖化によって休眠打破が十分に行われず、開花が不安定になるためです。また、台風の進路の変化や夏場の乾燥も影響を及ぼしています。最近では、静岡や和歌山、高知、宮崎、熊本などでも開花の異常が見られるようになっています。

 桜は、平安時代の「古今和歌集」にも詠まれるほど、日本文化に深く根付いた存在です。しかし、このまま気候変動が進めば、私たちが当たり前のように見てきた桜の風景が失われるかもしれません。桜の未来を守るために、私たち一人ひとりができることを考える必要があります。

 環境に優しい生活を心がけることもその一つ。エネルギーを大切に使う、無駄なゴミを減らす、身近な自然を大切にする。これらの小さな積み重ねが、地球温暖化の進行を抑える力になるのです。本校でも、環境について考える機会を増やしていきたいと思います。