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2025.05.16
トレンド情報
5月16日
人口減少が進む日本において、国力を維持し、発展させるためには、限られた「人財」をいかに育て、活かしていくかが課題となります。人は無限の可能性を秘めていますが、その可能性を広げ、伸ばしていくためには、環境の整備と指導のあり方がポイントです。その点で、メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手(ドジャース)や菊池雄星選手(エンゼルス)を育てた花巻東高校の佐々木洋監督は、スポーツの枠を超え、あらゆる分野に通じる示唆を与えてくれています。
野球部を率いた当初、甲子園出場は夢のまた夢だったようです。そんな状況を打破するきっかけとなったのが、恩師からの経営を学べというアドバイス。それまでは野球の指導書ばかりを読んでいたそうですが、経営者向けの講習会に通うようになり、指導者としてのあり方を考え直すようになったとのこと。
物事を非常識に考えることが大切と言われます。大谷翔平選手の二刀流は、かつては非常識だと考えられていました。しかし、それを非常識だと決めつける大人たちこそが非常識と考えるという発想です。これは子供の潜在能力を伸ばす教育全般に言えることかもしれません。
経営の視点を学んで変わったのは、単なる野球指導ではなく、出口戦略を見据えた指導をするようになったことだとか。監督になりたての頃は、強い選手が集まらないのはなぜかと悩んでいたものの、それは生徒=顧客の観点に立っていなかったからだと気づいたと回想されています。
プロ野球選手や大リーガーはおろか、大学進学や就職の実績もない学校に、優れた選手が集まるはずはありません。そこでまずは選手を集めるのではなく、出口で成果を出せる人材を育てることを目標にします。結果として、卒業生が大学や企業で評価されるようになり、それが選手を引き寄せることになったのです。
これは、様々な分野にも応用できる考え方です。ゴールを明確にし、それに向けた環境整備を行うことが成功につながるのです。高校野球の指導者は、野球で勝たせることを第一の目標とするのが通例ですが、佐々木監督は、自分の仕事は、部員を甲子園に連れて行くことではなく、その後の60年を勝たせることと述べられています。
大谷選手らに81マスの真ん中に将来の夢や目標を書き、その周囲に中間目標や行動計画を書き込むマンダラチャートを採用して、取り組ませています。これは目標を中心に据え、その達成のために必要な要素を細分化して可視化するものですが、指導の原点はここにあるのです。
花巻東では、具体的な質問に答えるシートを活用して、自分の目標を明確にしていく仕組みを作ります。ライバルは誰か、その選手に勝つために何をすべきかなど、具体的な問いに答えることで、自分のやるべきことを明確にしているのです。これらの指導法は、勉強やキャリア設計にも活用でき、実際、同校野球部からは2人の大リーガーに加え、東大生も輩出しています。
ご子息がスタンフォード大学に進学する際、菊池選手からアメリカは加点法、日本は減点法という話を聞き、深く共感したといいます。日本ではできないことを指摘する傾向がありますが、米国では長所を徹底的に伸ばす教育が展開されています。これはスポーツだけでなく、学問やキャリア教育にも言えることです。
監督は、グローバルな視点でアフリカの選手を野球部に迎え入れる構想や、海外留学を促進するシステム作りの必要性を説くなど、日本の空洞化を防ぐための提言をしています。世界を知らなければ、イノベーションを生み出せる人材になれず、グローバル社会を生き抜けないともおっしゃています。そして、自らも成長する努力を続けておられます。目標を持ち、学び続ける姿勢を子どもたちに見せていくことが、未来の人財育成につながることは疑う余地はありません。