校長ブログ

探究学習

2025.05.17 教科研究

5月17日

 2026年度から使用される高校の新しい教科書の内容がこの3月に決まりました。その特徴のひとつが、多くの教科で探究学習が取り上げられていること。探究学習は、知識を詰め込むのではなく、生徒自身が課題を設定、情報を収集・分析し、発表することを通じて、思考力や表現力を育む学び方です。すでに大学入試でもその成果が重視されるようになっており、高校教育のあり方が大きく変わりつつあります。

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 文科省が発表した新しい教科書253点(芸術と外国語を除く)すべてに探究学習に関する記述があります。『理数探究基礎』ではノーベル賞受賞者・大隅良典氏の研究を参考に、課題設定から仮説検証、実験・考察、発表までの流れが示されています。『家庭総合』では大学進学費用の比較を題材に奨学金制度について考えさせる内容があり、『保健体育』では感染症が消滅しない理由を調べ、対策を発表する活動が含まれています。探究学習を取り入れた教科書は、生徒が身近なテーマを通じて学ぶ機会を増やすねらいがあります。

 大学入学共通テストでも、思考力、判断力、表現力を重視する問題が増えました。新設の『情報Ⅰ』では、プログラミングを活用して部活動の担当を割り当てる問題が出題されました。詰め込み式の学習では対応できないことは自明です。今や、総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内入試での大学入学者は5割を超え、面接や志望理由書では探究学習の成果が重要な要素になっています。

 しかし、探究学習を進める上で、現場の教員が多くの課題を抱えているのも事実。認定NPO法人カタリバの調査(2024年)によれば、高校教員340人のうち9割が「探究学習に課題を感じている」と回答しています。その理由として、「授業案やカリキュラム設計の難しさ」「調べ学習で終わってしまう」といった点が挙げられています。

 さらに、高校の教科書のページ数は増加傾向にあり、今回の検定では平均320ページと、前回(2020年度)より3%増加しています。知識量の増加と探究学習の両立がたいへんという声も聞かれます。

 探究学習の導入が進む中、学校現場は知識を教える授業から生徒が主体的に学ぶ授業への転換を迫られています。そのためには、身近なテーマを設定することが第一歩。生徒が興味を持ちやすい題材を選ぶことで、学びへの意欲を引き出します。例えば、環境問題、地域の課題、SNSの影響など、生活に関係するテーマを活用できます。次に、外部人材の活用が考えられます。

 また、企業や大学の専門家と連携することで、より実践的な学びが可能になります。例えば、地域の企業と協力してビジネス課題に取り組んだり、大学教員の指導を受けながら研究を進めるといった方法があります。留意点としては、評価方法の工夫が不可欠。テストの点数だけでなく、プレゼンテーションやポートフォリオを活用して、生徒の思考過程や表現力を評価する仕組みが求められます。

 探究学習は、生徒が自ら考え、行動する力を育む教育です。その実現には、多くの課題がありますが、地域や大学と連携しながら、試行錯誤しつつ進めていくことが大切。今後も探究学習のあり方を模索しながら、より良い教育を提供できるよう努めていきたいと思います。