校長ブログ
クイズ王
2025.05.20
トレンド情報
5月20日
サイコロの目をすべて足すと21。では、すべて掛けるといくつになりますかという問いの答はわかりますか?これは1991年に放送された『第15回アメリカ横断ウルトラクイズ』の決勝戦で出題された問題であり、正解は720です。
この問いに瞬時に答えられたのが当時22歳だった能勢一幸さん。10ポイント先取で優勝を果たし、ニューヨーク・マンハッタンの夜景を背にガッツポーズを決めた姿は記憶に新しいところです。
クイズの世界に魅せられたのは、小5の時。テレビで見たウルトラクイズのスケールとドラマに心を奪われ、いつか自分もこの舞台にという夢を抱きます。その後、中学・高校時代にはクイズ番組を録画し、分からなかった問題をノートに書き溜める日々。大学ではクイズ研究会に所属し、地元の埼玉県庁に就職してからも挑戦を続けます。
訪れたチャンスは社会人1年目。何度も予選敗退を繰り返し、5回目の挑戦で念願の決勝に進出します。司会者とコミュニケーションできる力が必要と感じ、初対面の相手との会話をどう盛り上げるか意識するようになったそうです。クイズと仕事の両立に悩みながらも、つかんだ栄冠。その経験は彼に大きな自信と、クイズは世代や立場を超えて楽しむことができ、相手をリスペクトする大切さを気づかせてくれたとのことです。
県庁では防災行政をはじめ、交通政策や県立大の運営など、様々な分野でキャリアを積み上げられています。地方行政に従事するかたわら、クイズイベントの企画や作問に携わり続けています。2018年には埼玉県主催の「埼玉クイズ王決定戦」の監修を担当。特に印象的だったのは、女性だけを対象にした大会を立ち上げたこと。昨年で27回を数え、数分で定員が埋まる人気ぶりだとか。
能勢さんは、一般参加者が出場するクイズ番組が減少する一方、クイズイベントが盛んになっている現状の中、クイズが文化として根づいてほしいと語られています。かつては理解されにくかったクイズを趣味にするということも、今ではネットや動画配信、サークル活動などを通じて、世代を超えて多くの人が楽しむようになりました。
実際、2024年には全国で529ものクイズイベントが開催され、のべ2万4,700人が参加したというデータもあります。そこには、ゲームや配信をきっかけにクイズに興味を持ち、参加してみたいと感じる若者の姿が増えているそうです。
このエピソードを通して学べるのは、好きなことを徹底的に追求することの尊さです。たとえ遠回りに見えても、熱中し続けることで、自分の人生を豊かにする道が見えてくるのです。学ぶことの意味は、点数や偏差値だけではありません。自分の興味・関心のあることに向き合い、友と語り合い、工夫し、深めていく―そうした経験の中にこそ、生きる力が育まれていくのです。