校長ブログ

新しい学校のかたち②

2025.05.27 カリキュラム・マネジメント

5月27日

 次期学習指導要領の改訂に向けた議論が進められる中、義務教育の改革として注目されているのが、義務教育学校。これは2016年に創設された制度で、小学校と中学校を一体化し、9年間を通じた教育を実現するものです。

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 メリットは、432制や54制といった柔軟な学年区分の設定。9年間で育てたい資質や能力を体系的に計画することができるわけです。教科指導においても、算数と数学、図画工作と美術といった教科を一貫して教えることで、より深い学びを提供できます。小学校高学年での教科担任制の導入にもつながります。

 かつては「七・五・三問題」と言われ、義務教育が終了しても十分な学力を身につけられない子供が多くいることが指摘されてきました。そこに義務教育学校が登場したわけです。例えば、京都市にある大原小中学校(現在の京都大原学院)では、前期(小14年)、中期(小5〜中1)、後期(中23)という3つの段階に分け、それぞれの発達段階に応じた指導を行っています。そして、「大人になる科」と呼ばれる総合的な学習では、9年生が「大原提言」という卒業発表を行い、自らの探究の成果を地域に向けて発信するといった具合です。

 この学校の改革に携わった小松郁夫氏(関西国際大客員教授、国立教育政策研究所名誉所員)は、子供たちが9年後にどのように成長しているかを想像し、そこから逆算して小中の教員が文化や指導観の違いを相互理解し、カリキュラム・デザインする「バックキャスティング」の重要性を述べられています。これは私立中高一貫校が長年にわたり、実戦したきた教育にも相通じるものですが、ひいては、地域社会の持続可能性にも寄与するものです。

 義務教育として行われる普通教育の目的は、教育基本法第5条で「各個人の児童生徒の有する能力を伸ばしつつ社会で自立的に生きる基礎」を培うことと「国家及び社会の形成者として必要な基本的な資質を養うこと」が規定されています。

 義務教育学校に限らず、小中一貫教育には独立した小学校と中学校が組んで義務教育学校と同じような教育を行うものもあります。いずれにせよ、子供たちを9年間でどう育てるのかという本格的な議論と時代の要請に合う方向性を模索していきたいものです。