校長ブログ
コーヒーテック
2025.05.29
教科研究
5月29日
2050年には、コーヒー豆の栽培に適した地域が半減するという衝撃的な予測が、数年前に発表されました。(国際熱帯農業センター)地球温暖化による干ばつや害虫の影響で、高品質なアラビカ種が育つ土地が減ってしまうというのです。
一方、アジアを中心にコーヒーの消費量は年々、増加し続けています。中国では、5年間で消費量が4割増加。需要と供給のバランスが崩れる中、このままでは、おいしいコーヒーが飲めなくなる日が来るかもしれないと、世界中で懸念が広がっています。
そのような中、未来のコーヒーを守ろうとする日本発のスタートアップの挑戦が注目を集めています。例えば、ストーリーライン(東京)という企業。東北大学と連携し、CO₂を使った新しいカフェイン抽出技術を開発しました。ルワンダに工場を建設し、現地で高品質なデカフェ(カフェインレスコーヒー)を生産する計画だとか。
従来の方法では大量の水を使ってカフェインを除去するため、環境負荷が高く、工場の立地も制限されていました。しかし、同社の技術では、CO₂を特殊な状態にして使うことによって少量の水で効率よくカフェインを抽出できるとのこと。結果として、豆へのダメージも少なく、味や香りも損なわない美味しいデカフェが可能になったのです。妊娠中の方や産後、あるいは、夜でもコーヒーを楽しめるわけです。
琉球コーヒーエナジー(沖縄)は、琉球大学から生まれたスタートアップですが、国内では珍しい本格的なコーヒー豆の栽培に挑んでいます。
沖縄はコーヒーベルトと呼ばれる赤道周辺の栽培適地の北限に位置し、栽培条件は決して悪くありません。ただし、台風や塩害といったリスクがあります。そこで同社は、IoTセンサーを駆使した屋内型の栽培施設を開発、温度・湿度・水分量を自動で管理できるこのシステムにより、安定した栽培と省力化の両立が可能になりました。将来的には、沖縄県内で年1000トンの生産を目指すとのこと。今の子供たちが大人になる頃には、国産コーヒーが当たり前になっているかもしれません。
海外でも、従来の枠を超える動きが出ています。米国のアトモ・コーヒーは、ナツメヤシの種などを原料にして、コーヒーの香りや風味を再現した粉末飲料を開発しました。コーヒー豆を使わない市場も広がりを見せています。
TYPICAホールディングス(大阪)は、生産者と買い手をつなぐ電子商取引(EC)のプラットフォームを提供。中間業者を介さず、生産者が適正な価格で販売できるよう支援しています。サステナブルな農業とフェアトレードの推進にもつながります。
これらの取り組みから見えてくるのは、持続可能性とイノベーションの融合。技術やアイデアを活かして、自然環境を守りながら、安心で美味しいコーヒーを届け、そのような未来を形にしようとしているのです。
変化する社会の中で、課題を見つけ、仲間と連携しながら解決策を探究する姿勢は学習指導要領が求めるもの。まさに生きる力を体現しています。何気なく口にしているコーヒーですが、その裏側には、地球規模の課題と、それに挑む人々の物語があるのです。